保育園を円滑に建設するための一私案

荘司 雅彦

昨今、保育園建設が候補地周辺住民の反対で頓挫しているケースが多いようです。
いかな子供の声であっても、周辺に住む人たちにとっては静謐さが害されるので、反対する気持ちも理解できます。猛反対を押し切って建設すると、開園後様々なクレームが寄せられたり嫌がらせを受ける恐れもあります。

そこで、ひとつの私案として、保育園を円滑に開園する方法を考えてみました。

まず、近隣騒音というのは極めて主観的な問題であるという事前認識が必要です。
ずいぶん昔、私がとある行政委員をやっていた時、バスの発車の音がうるさいと怒った老人が竹刀か木刀でバスの出発を妨害するという案件を担当しましたことがあります。

その老人の言い分は、バスが発車する度にクラクションを鳴らすので静謐が害される。
趣味の読書もはかどらずノイローゼ気味になっている。バス停を移動させるかクラクションを止めるかして欲しいというものでした。バス会社は、バス停を移動させることは公共交通機関として不可能だし、クラクションは安全のために欠かせないものなので、いずれの要求も受け入れられないと主張し、斡旋・調停は不調に終わりました。

現場を見ると、老人宅はバス停の近くとはいえ道路から距離と高低差があり(自宅の方が高くなっています)、客観的には受忍限度を超えた騒音被害があるとは思えません。

しかし、バス会社に抗議をし、敵対しているうちにクラクションの音が気になって仕方がなくなったものだと推測しました。集合住宅でのピアノ騒音事件がありましたが、あれも自分の目に入れても痛くない程かわいがっている孫が弾いていたのであれば、全く同じ音でも楽しく聞こえたはずです。

このように騒音というのは極めて主観的なもので受け止め方によって全く異なるという事実を前提に、保育園建設のやり方の私案を述べていきます。

まず周辺住民の中から複数の協力者を探し出します。2,3人でも構いません。この人たちを中心に、保育園建設の協力者の輪を広げていってもらいましょう。協力者が見つからなければ、周辺住民宅を直接戸別訪問して次の事項を伝えます。

保育園建設に同意してくれた方々全員に、役場認定の「名誉園長」の称号を与えて感謝状を贈ります。
そして、(これが肝ですが)建設された保育園の中に素晴らしいデザインでできた「感謝の碑(名称は適宜)」を建て、同意者の方々のお名前を彫り込むことにするのです。

開園後に同意者になってくれた方や余分な協力をしてくれた方がいた場合は、その都度名前プレートを碑の別のスペースに設置することにします。建設に同意するだけで、保育園内の「感謝の碑」に永久に自分の名前が刻まれ、追加協力に対してはさらに名前が残されるという仕組みです。役場認定の名誉園長の肩書きは漏れなく付与されます。

子供だましだと思うかもしれません。しかし、自分の名前刻まれた碑が園内に永久に残ると思えば、同意者や協力者が増えることは間違いありません。米国の富豪の中に、自分の名前を残すために巨額の寄付を大学や博物館にする人たちが多いことに鑑みれば、その効果は決して侮れないと考えます。

記念碑に要する費用はたいしたことはありません。頑丈で美しいデザインのものをつくれば、周辺住民の誇りの象徴にもなるでしょう。自分の名前が刻まれた碑の周りで遊ぶ子供たちの声は、きっと心地よく響くのではないでしょうか?

ダメで元々、どこかの自治体で試してみてくれませんかね〜。

荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。