日本の政局や北朝鮮問題のウォッチングにかかり切りで、ロッテ問題の記事を書くのは何気に去年10月以来のことなのだが、韓国政府が対北ミサイル防衛で、ロッテのゴルフ場にTHAADを配備したことに対し、これに反対する中国が報復で中国国内のロッテマートをボコボコにいじめまくっていることは周知の通りだ。とうとうロッテはショッピング事業の中国撤退に舵を切り始めた。
ロッテマート、中国店舗売却へ=迎撃ミサイルの「報復」受け:時事ドットコム
お家騒動との絡みで言えば、実権を握った創業者次男・重光昭夫氏が政治と接近してきたがために、THAAD配備に至ったとも言えるわけなので、このチャイナリスクを招いた責任の部分はどうなるのか。昨年、裏金疑惑で逮捕寸前までいった昭夫氏は今年4月、朴大統領に贈賄したとして在宅で追起訴されている。それでも経営の中枢にとどまり、ガバナンス体制の見直しは継続しており、この10月には韓国ロッテはHD体制に移行する。
この体制見直しに伴い、経営復帰を目指す創業者長男の宏之氏が韓国ロッテグループ中核である上場4社の株を売却したことがまた注目されている。
ロッテ創業者長男 韓国グループ会社の株式売却へ(聯合ニュース)
この夏には、兄弟2人が母親の仲介で2年ぶりに対面。上記の聯合ニュースでは「保有株式売却を通じ経営権争いから身を引こうとしているのではないかとの見方が出ている」としている。記事を斜め読みすると、終戦ムードであるかのように一瞬みえてしまうが、それは早合点だった。よく考えてみると、昭夫氏が進める再編で合併する4社のうち、ロッテショッピングは、中国でボロボロになった「当事者」だ(レコードチャイナによれば、8月時点で約500億円規模、ロッテグループ全体のチャイナリスク損失は約1960億円規模)。このまま4社が合併すれば、ほかの3社の株主が損を引き受ける形になる。
兄の宏之氏からみれば、弟の昭夫氏が既存株主の利益より支配体制を固めることを優先した組織再編ということだろう。HD体制に移行すれば、昭夫氏の基盤が強固になるだけに、宏之氏としては反対を貫くしかない。ややこしいが、聯合ニュースの最後の方にも書いてあるように、売却は、4社の会社分割・合併の決定に反対の意思表示を示すためであるようだ。宏之氏が売却によって得られる700億円以上の資金も使って、どう反撃してくるのか。
日韓のメディアとも部分的にでも収束の可能性を取りざたしているが、経営権を巡る争いに終わりが見えていないのが実情なのだろう。お家騒動、勃発当初から見てきただけに折々に触れていきたい。