2020年の教育改革にともなって、全国では大学が独自性を出すために多くの大学が新設学部をつくったり、魅力あるプログラムを開発しています。
私は、現在鹿児島県長島町という町で、地方創生に関わる仕事をやっています。
地域には、「優秀な人材を集める」という課題に対して、なかなかアプローチするのが難しい現状があります。
地方創生が叫ばれる中、東京で消耗するなら、いっそのこと地方にいって生活してみたいと思う人も増えてきている一方、地方に飛び出すことは清水の舞台から飛び降りる覚悟のようなもの。キャリアや家庭を考えると二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか?
先日、有楽町の国際フォーラムで開催された「ふるさと回帰フォーラム2017」の会場を覗いてきました。
47都道府県350自治体が参加する移住相談コーナーや初心者向けセミナーなど多くの地域が受け入れを熱心に説明していました。その様子はまるで新卒の企業説明会。どこの地域を選べばいいのか、相談者は選び切ることは難しいと思いました。
地域に飛び出すことの背中を押すためにも地域はなにができるのでしょうか?
地域の研究と実践を、SFCの大学院に入ってできる制度「地域おこし研究員」をつくりました。
「地域おこし研究員」は、SFCの大学院生として研究開発しながら、自治体等から「地域おこし協力隊」などとしても任用されて、地域の課題解決に向けて地域のみなさんと一緒に挑戦していくことができる制度です。
全国の自治体で、募集が始まっています。私の町「長島町」を始め、広島県神石高原町、新潟県三条市、岩手県釜石市で受け入れが始まりました。
この地域おこし研究員の目的を僕なりに書き出してみました。
(1)日本の各地で、地域学部など新しい学部が多く生まれて地域への活動を推進していく動きがある一方、研究だけでなく、実践をしていくことが地域で期待されています。しかし、実践者の立場でも具体的な活動指針がないため、その活動の成果を明確に測ることができていません。他地域との比較など研究されていないことが多いのも問題です。実践と研究それぞれの問題を解決することが目的です。
(2)誤解を恐れずにいうと、地域おこし協力隊は受け入れる自治体の体制の問題だったり、挑戦してくる人の問題だったりで全国的に悪い事例も報道されていますが、地域に入るための制度なので、要は使い方次第だと思います。この地域おこし研究員を取り入れている自治体同士で、地域の活動を共有して、よりよい活動地域を作っていくことが目的です。
(3)会社に所属すると、「やっていきたいこと」と「やっていること」がうまく噛み合わず、悩んでいる人が多いように思います。その一方、地方に移住したり、大学にはいって学び直すには、金銭的にもキャリア的にも不安なことが多くて踏み出せない場合も多いと思います。そんな私みたいな社会人に、スキルを活かして活躍できる場と最低限の報酬を与えることで良い人材が現場にいける機会をつくることが目的です。
後押しする形で、政府も「人づくり改革」の中で、人生100年時代構想を提案し、その中で学び直し教育を推進しています。一度、社会に出た人が、その経験とこれから必要になる知識を得るために学び直しをしてキャリアアップしていくようになると思います。中途採用を進める会社も、そういった人材を採用していくはずです。大学の役割も、これまでよりも一層さまざまなバックグラウンドをもった人の交流する場となっていくはずです。
地域としては、挑戦すべき課題がまだまだ多くあります。地域の人と一緒にその課題を解決できるような実践に
取り組む研究員制度は、きっと今後いろいろな地域に広がっていくことになると思います。
募集している自治体として、ビズリーチの求人検索エンジン「スタンバイ」を利用して、取り組んでほしいテーマや条件などが紹介されています。
転職サイトのサービスと連携して募集することで、学び直しを考えるターゲットに、この制度を知ってもらう機会を増やすことと、このプログラムを終えたあとの活躍の場を用意していくことができるのではないかと考えています。
これまで地域おこし研究員の説明会は、慶応義塾大学内で2ヶ月に1回のペースで行ってきていますが、どの説明会会場でも企業人や大学生、それから自治体関係者などが詰めかけるように集まってきています。
慶應義塾大学の大学院の入試情報はこちらから確認できます。
土井 隆 鹿児島県長島町地方創生統括監/株式会社コアース代表取締役
慶應義塾大学SFC研究所所員
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、楽天株式会社を経て、株式会社ルクサにてEC事業に従事。2012年、株式会社コアース設立。市民活動を支援するWEBサービスのプロデュースを事業とし、慶應義塾大学SFC研究員として地域社会における教育の研究を行う一方、2017年より鹿児島県長島町の地方創生統括監として地方創生の現場での取り組みを行っている。