人間は、誰もが物事を都合の良いように考えてしまうものだ。仕事にしても、うまくいかなくなると取引先が悪い、上司が悪い、あるいは景気が悪いと周囲のせいにしたくなる。知人の会社経営者に、「うまくいったら他責、失敗したら自責」だと教えてもらったことがある。良い事を他責ととらえられる人には「感謝」があるという意味になる。
また、思い通りにならないことや、苦しいことは、周囲のせいにするのではなく自分に原因があるとすることで、自らを振り返ることができる。思考や行動に間違いはなかったのか考えてみる。なにか思いあたることがあれば、修正し改めてみる。すべてを他責にしたところで、なにも好転することはない。
政治家は言い訳をしない
2012年12月の衆議院議員選挙で与党だった民主党が大敗した。現役閣僚8名が落選する歴史的大敗だった。脱官僚・政治主導を掲げて、事業仕分けを行い、高等学校の授業料無償化を公約とした。当初は熱狂的に支持されたが、政策の実現や成果が現れなかったため、支持率が急落し大敗を引き起こしたと言われている。
選挙後、野田総理や党の責任を批判する発言が目立った。その多くは、責任を転嫁する他責が目だった。岡田副総理は「選挙は、最終的には自分の責任。執行部や他人の責任にするところから改めないと、この党は再生できない」と発言した。実際に同じ民主党のなかでも実力のある人は選挙区で当選を果たしている。
他責に終始する人は、そもそも当選したのも「執行部のおかげ」、「自分の力ではない」ことを露呈しているようなものだ。言いたいことがあっても腹にこらえて「本件のすべては私の不徳の致すところである」と堪えることが政治家として大切な姿勢ではないかと思う。ここで、早川忠孝元衆院議員の記事が印象深かったので紹介したい。
この記事は、10月5日(木)のものになる。タイトルは「ノープロブレム。民進党支持者の方は前原さんに感謝した方がよさそうだ」。今回の合流問題では、前原代表の行動を批判する意見が多かった。私も過去の発言と矛盾はしないのか疑問に感じているところもある。しかし、早川氏はこの流れについて深く洞察されている。
まず、今回の合流は、民進党から立候補する予定の公認候補予定者に対して最善と思われる起死回生の一手を打ったとしている点だ。いまの状況で衆議院総選挙を迎えれば、現状から大幅に議席を減らすことが予想されていた。そうなれば大きな打撃になる。朝日新聞の調査では立憲民主党でさえ7%台の支持率を獲得している。
有権者の支持を獲得できなかった民進党から、立憲民主党という新しい旗が出来ただけで7%台の支持率を獲得できたのだから大変なことである。さらに、前原氏は、10月2日までに民進党のすべての公認候補予定者の口座に1500~2000万円の資金を振り込み済みとしている。これは、大きな支援を公認候補予定者の方にしたことになる。
ほぼ、落選必至と思われていた人もこれで救われるかも知れない。支持率が低迷していた民進党時代にはおよそ考えられなかった事態である。これには様々な意見があるだろう。世の中に起こっているすべての事象に対して、何が正義で何が正しいか答えを導き出すことは簡単ではない。私は、2012年の「解散密約(近いうち解散)」を思い出していた。
「解散密約」を知らない人のために
背景は次のようなものであった。谷垣総裁が社会保障・税一体改革関連法案の協力を決断する。谷垣総裁と野田総理が極秘会談したことが判明し憶測がひろがる(キャプチャー画像参照)。これにより、「解散の密約」を交わしたのではないかとの見方がささやかれはじめたのである。しかし、谷垣総裁は「ぺらぺらしゃべるものではない」と明言を避けた。
今回、このまま選挙戦に突入すれば、民進党はさらなる打撃を負う可能性があった。しかし、結果的に民進党は割れ、解散前よりも支持率がアップする事態を生じさせている。
そう考えると、離党した都議は少々話しすぎるようにも感じる。メディアは飛びつくが、有権者の目にはどのように映ったのだろうか。政治家の多弁は好まれない。政治家は寡黙なほうがいい場合もある。すでに本懐を遂げている。
参考書籍
『朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)
尾藤克之
コラムニスト
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