「栄養管理士も太鼓判のフルーツ鍋で健康に」へ一石を投じる

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

季節は秋、日中は日差しが強い日もありますが朝夕は少しずつ寒くなってきましたね!涼しい秋が終わり、冬になるとおいしいのが鍋ですよね。「健康にはなりたいけど、栄養豊富な食材を使ってしっかり料理をするのは面倒くさい…」という悩みを抱えた現代人にありがたいのが鍋料理。鍋は食材を切ってグツグツ煮るだけでOK。しっかり火が通るので野菜を神経質に細く切る必要がなく、野菜をたっぷり食べることができ、油も使わないので低カロリーでヘルシーですよね。「冬の料理に困ったらとりあえず鍋」と筆者と同じことを考えている人も世の中には多いのではないでしょうか?

そんな日本の冬の風物詩である鍋にはトレンドがあります。昨年16年度はパクチー鍋、そして17年度の今年はフルーツ鍋が来ると予想するぐるなびの記事があります。フルーツビジネスをしている私としては、果物が注目されるのは嬉しいと感じるのですが、反面「火を通すので果物本来の健康パワーが得られないのでは?」という懸念もあります。

トレンドになった食材はたいてい鍋化する

最近のグルメトレンドで注目度が高かったのはパクチーですね!

パクチーは言わずもがな、ベトナム料理やタイ料理にふんだんに使われる食用葉で、美容や健康作用があると女性を中心に昨年ブームが起こりました。パクチー専門店ができ、「パクチスト」というパクチー好きな人を指す言葉が誕生し、東京ではパクチーフェスというイベントまで開催されてしまいました。これまでパクチーといえば好き嫌いが極端に分かれるので、外食としては敬遠されがちでしたが、一旦ブームが起こると一気に人気の高まりを見せました。

この他、トレンドグルメといえばジビエ料理やスイスのラクレットチーズなどがありますが、こうしたトレンドになった食材はたいてい「鍋化」する傾向があるように思えます。パクチーも「爆盛りパクチー鍋」といった、嫌いな人からすると背筋が寒くなるような鍋化を果たしましたし、ジビエもジビエ鍋に、そしてラクレットさえもラクレットチーズ鍋になってインスタ上で活気づいています。

このようにグルメトレンドで話題になった食材は鍋化し、今年度のトレンド鍋はフルーツがノミネートされたわけです。

若者を中心に支持されるフルーツ鍋

ぐるなびの記事によるとフルーツ鍋とは次のようなものといいます。

常夏のトロピカルフルーツで作る本格的なココナッツカレー鍋。体を冷やすと言われるトロピカルフルーツですが、スパイスをたっぷり使ったカレーで体を中から温めます。

引用元:ぐるなび「2017年版 「トレンド鍋」は”フルーツ鍋”」

画像引用:ぐるなび「2017年版 「トレンド鍋」は”フルーツ鍋”」

この記事にあるフルーツ鍋は、ココナッツカレーにフルーツを一緒に入れて煮込んだもののようです。そしてフルーツ鍋を支持するのはトレンドに関心が高く、インスタなどSNSを積極的に利用する20代の若者という調査結果があり、実に20代の4割が「食べたい」と答えているとのことです(データ引用元はぐるなび記事内にある「2017年8月9日(水)~2017年8月10日(木)期間にインターネットで20~60代ぐるなび会員 計1492名を対象にした意識調査」より)。

若者がフルーツを敬遠する理由の一つに「果物は酸っぱいから苦手」というものがあります。それを鍋として加熱してしまうことや他の食材と一緒に頂く事で、食べやすくなると考えているのでしょう。パイナップルは生で食べると舌先がピリピリしてしまうほど酸味の強いものもありますが、加熱することで酸味もマイルドになってとても食べやすくなりますよね!また、りんごもそのまま食べるのが苦手でも、ホットアップルパイは程よく落ち着いた酸味がおいしい!という人もいます。

フルーツを生食するのは抵抗があっても、加熱や味付けをすることで食べやすく受け入れられやすいのでしょう。

健康や美容効果を期待されているとあるが…

食べやすさや、インスタ映えすることで人気の高まりを見せるフルーツ鍋で、管理栄養士さんも太鼓判を押しているのが今回ご紹介したフルーツ鍋です。しかし、本当に期待されているほどの健康や美容効果があるのでしょうか?

健康や美容効果というのは、果物に豊富に含まれる食物繊維やビタミン、ミネラルに酵素を指しているのでしょう。もちろん、食物繊維は加熱や味付けをしても変化しないので、生よりも食べやすくなることでプラスの効果を得ることは可能でしょう。しかし、酵素やビタミンについていえば水溶性のものもあり、鍋にする過程で栄養が流れてしまったり、熱で破壊されるという主張もあります。そうなると生食に比べて健康や美容効果が得られない可能性がありますよね。

また、ミネラルには「拮抗作用」という特性があります。「拮抗作用」とはお互いにその効果を打ち消し合ってしまうもので、お鍋として一緒に食べる食材の食べ合わせが悪い場合、栄養は吸収されずに流されてしまう懸念が残ります。栄養については専門家の間でも主張にばらつきがあり、100%正しいことが分からない部分がいくつも残りますが、「フルーツ鍋は、生食フルーツと同じだけの健康や美容効果が得られる」と考えてフルーツ鍋の健康や美容効果を過信するのは注意が必要です。

…とフルーツ鍋をトレンドにしたいメディアへ一石を投じることをいってみたものの、個人的にはおいしくて大いに盛り上がりそうですね。「健康効果を期待して」というよりは単に嗜好品としておいしく食べることを目的に、筆者も今年の冬はフルーツ鍋に挑戦してみたいと思っています。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。