民進党の小川敏夫参院議員会長が民進党再結集の考えを表明した(のちに訂正)。これに呼応するように、前原代表は14日、「これほど有権者を愚弄した話はない。絶対にやってはいけない」と否定し「希望の党」への合流を進める考えを示した。立憲民主党の枝野幸男代表も、「後ろ向きのことは考えていない」と再結集を否定した。
有権者を愚弄するとは
民進党への再結集はなぜ有権者を愚弄した話なのだろうか。私は「信」の問題ではないかと考えている。では、民進党から希望の党へ移籍した議員は有権者を愚弄してはいないのか。14日、複数の韓国メディアが、北朝鮮にミサイル発射の兆候があると伝えた。北朝鮮の移動式発射台が移動しており監視を強めているとしている。
緊張が高まる北朝鮮情勢を踏まえれば、安全保障に対する姿勢は極めて重要な争点になる。「安全保障」とは、国家や国民の安全を他国の脅威から守ることであり、その考えは国家根幹をなす。いま、ひとたび有事が発生すれば、私たちの平穏な生活が一気に脅かされて、すべてが消え去る危険性があることの警告だからである。
政治とは言葉であり、言葉に信がなければ成り立たない。民進党の議員が必死に反対した安保法制。2015年7月、衆議院特別委員会にて、民進党の議員の多くが怒号をあげてプラカードを持ち委員長席に詰め寄った。テレビには「強行採決反対!!」「自民党感じ悪いよね」の文字が躍る。学生団体と一緒にデモに参加していた議員もいる。
今回、希望の党に移籍をした議員は、過去との整合性が問われている。当時、前原代表は「憲法違反は許されない。廃止を目指す」と方向性を示していた。多くの議員も「魂は売れない」と猛反対した。命がけで猛反対した理念を簡単に捨ててしまってもいいのだろうか。ところが、言ってるそばから前言を覆し『希望の党公認』として名を連ねている。
議員1人あたりのコスト(歳費、期末手当、旅費、雑費、文書交通費、議員特殊乗車券、弔慰金、立法事務費、政党交付金、秘書手当など)は年間1億円を超える。これらはすべて、一般会計歳入(つまり税金)から支払われていることを鑑みれば、政治家の「信」は投票における重要な指標になると思われる。
儒教の祖である孔子は、「信」を捨てたら人ではないと、論語(顔淵第十二)のなかで記している。これは、孔子が弟子に「信なくば立たず」について説いている一節になる。「食」「兵」は捨てられるが「信」を捨ててはいけない、それを捨てたら人ではないと諭しているのである。はるか昔から「信」の重要性は説かれていた。
民進党は保守?だったの
文字数の関係があるので細かい指摘はしないが、結構な人数が対象になる。当時、党の要職(政調会長)だった細野豪志議員は「安保法案は廃案にするしかない」と語っている。しかし、「希望の党」移籍後は「安保法制を白紙撤回と言い続ける方は考え方としては厳しいと思う」と、あるニュース番組で答えている。果たして矛盾はしないのだろうか。
「希望の党」移籍後は、複数の議員から違和感のある発言が見受けられた。「リベラル保守の結集を掲げてきた。希望の党が掲げる保守は私の考えに近い」と話していた議員。当時の民進党は「保守?」だったようである。「個別自衛権の再定義、憲法違反でない枠組みを作っていく」「自衛力は強化すべき」とテレビインタビューで語った議員もいる。
これらの議員を含めプラカードを持ち委員長席に詰め寄り、学生団体と一緒にデモに参加していた方々が多数確認されている。しかし、民進党は「保守?」だったようである。
有権者のなかには、テレビのインパクトをいまだに覚えている人が少なくない。衆議院選挙は22日に投開票が行われ夜半には大勢が判明する。なお、私はあくまでも中立な立場で投稿していることも申し上げておきたい。
参考書籍
『朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)
尾藤克之
コラムニスト
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