アライ(ally)というのは、社会課題の当事者達を応援する仲間たちのこと。LGBTムーブメントから生まれた言葉ですが、LGBTだけでなく、色んなところで使えます。
障害者アライ、性犯罪被害者アライ、認知症アライetc・・・
そんな中「こどもアライ」と言うべき人たちがいます。子どもの虐待問題に胸を痛め、何かしたいと思う人たち。子ども食堂のボランティアに行ったり、子どもの問題について寄付をしたり。
そうした方々が多ければ多いほど、子どもの抱える問題の解決は早まります。
衆議院議員選挙の中に「こどもアライ」はいないのか。
今回は、「こどもアライ議員」とも言うべき方々を、僕がお会いした候補者の中から紹介したいと思います。
木村やよい
:京都3区(京都市伏見区、向日市、長岡京市、大山崎市)・自民党
http://www.kimuyayo.jp
元看護師であることから、別名「自民党のナイチンゲール」。ひとり親として子育てもずっとされてきて、子どものための政治をしたい、と仰り続けていました。
ある時、自民党の会合でご一緒した時。年配の男性議員が、
「木村先生は、だんながいないんだよ、ガハハハハ」みたいな冗談を言った時がありました。
僕が憤慨し、会が終わった後に木村弥生さんに「ひどかったですね、大丈夫でしたか?」と聞いたところ、
「全然平気。女性議員は色々とあるけれど、でも私たちが頑張って、女性の、子育てをしてきた人間達の声を政治に反映させないと・・・!」、みたいなことを笑顔で仰られて、優しい見かけによらず、なんて芯が強い人なんだ、と思った覚えがあります。
元々は東京出身ですが、リベラルな土地柄の京都で、しかも不倫で議員辞職した宮崎議員の後任ということで、超逆風の中の選挙戦。
彼女のようなマイノリティの痛みが分かる議員は、国会に絶対に必要なのではないか、と強く思います。
たじま要
:千葉1区(千葉市中央区、稲毛区、美浜区)・希望の党
http://www.k-tajima.net
ネット上では「透析患者は殺せ」発言の長谷川豊に投票しないよう、大きな盛り上がりを見せています。しかし、彼は比例1位なので、大差で負けないと、うっかり比例復活してしまいます。
そこで、反長谷川豊の方々は、同じ選挙区の有力者、田嶋要候補に入れることをお勧めします。長谷川豊に絶対に国会の赤絨毯を踏ませないと言う意味でも、そして子ども達のためにという意味でも。
と言うのも、田嶋要さんは、これまで特別養子縁組の法制化に尽力されて来たのです。
彼が野党側、そして与党側は野田聖子さんと公明党遠山議員が、党の垣根を超えて一緒に協力して、議員立法として「養子縁組あっせん法案」が提出され、成立したのでした。
地元千葉では、特別養子縁組支援NPOの立ち上げにも関わられていて、虐待死を防ぐために養子縁組を世の中に広げて行こう、と本気で考えられている方です。
「殺せ」と叫ぶ候補、命を救おうと駆け回る候補。人生いろいろ、候補いろいろです。
高木美智代
:比例区東京・公明党
http://www.michiyo-t.com
公明党のゴッドマザー。僕が日本で最も厚生労働大臣をやってほしい人の1人がこの方。
公明党は全体的に福祉のことをよく分かっている議員さんが多いですが、その中でもこの方はずば抜けています。
弟さんが生死をさまよう事故で障害者に。その体験をベースに、日本の障害者支援に力を尽くし、発達障害者支援法創設の中心メンバーとなっています。
今の保育制度の基盤である「子ども・子育て新制度」創設の際は、対立する民主党と自民党の間に、「ここでこれ潰しちゃったら、子どもたちはたすかるの?」と割って入って、妥協にまでこぎつけたのは、彼女の力が大きかったのです。
待機児童問題、医療的ケア児問題などなど、弱い立場の親子に寄り添う姿勢。政界の中の「福祉オブ福祉」の称号を与えたい、そんな議員さんです。
長島昭久
:東京21区(立川市、日野市、国立市、多摩市等)・希望の党
http://www.nagashima21.net/kibou2017/
安保外交のイメージが強いですが、「子どもの貧困議連」幹事長をされてきている「こどもアライ」議員です。
彼がスゴいのが、全く偉ぶらないんです。
20歳近く年下の僕に、
「川崎市で起きた上村くん惨殺事件のようなことを、もう二度と起こしたくない。子育て政策について、教えてくれませんか」と謙虚に頭を垂れるそのさまは、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉を地でいく人間のできっぷりです。
こういうハートのある「保守」政治家がいてくれないと、と思うのです。
細野豪志
:静岡5区(三島市、富士市、御殿場市、伊豆の国市等)・希望の党
http://www.gohosono.com
「生活保護家庭の子どもは大学行っちゃダメ問題」というものがあります。
生活保護家庭の子どもが大学に行くのはダメ。どうしても行くなら、「世帯分離」と言って、もとの生活保護家庭とは別の世帯となることで初めてそれが可能になります。しかしその場合、世帯構成員が一人減るので、保護費は約5万円減る。
この減った分をバイトして必死に稼ぎ、さらに授業料等も稼いでいくのですが、それで疲弊していき、勉強する時間もなくなっていくわけです。酷い制度です。
この問題を、今年のはじめ、細野議員は安倍総理に国会質問をぶつけました。それによって「生活保護家庭の子どもは大学行っちゃダメ問題」が政治的イシューとなりました。その後、厚労省も対応を検討。全ての問題が解決とはなっていませんが、約5万減額のうち、住宅補助1万円分は減らされないことに。
これでもまだまだ固い岩盤はそのままですが、細野砲によって蟻の一穴が開いたことは確かです。
こういう、「地味だけど子ども達の可能性を押しつぶす大岩」というものはそこかしこにあります。細野さんのような重量級の政治家が、今後も活躍して、どんどん岩を砕いていってもらえると嬉しいです。
小林史明
:広島7区(福山市)・自民党
https://fumiaki-kobayashi.jp
政界のジャニーズ。イケメン若手政治家、という本当にイケすかないステータスの男ですが、でも良い人なんです。
子どもの政策をやろうとするとすぐ「財源が・・・」という話になり、具体的なアクションに繋がらない。そんなジレンマの中、小泉進次郎議員とともに「こども保険」立ち上げに奔走しています。
しかも自分に子どもがいない中、子ども達のことを考えています。
そう、子どものことを考えるのは、当事者だけじゃなくて良いんです。まだ子育てしていない人、もう子育て終わった人、みんなが「こどもアライ」になれるんです。
そんなアライのあり方を提示してくれている小林さんには、どんどん偉くなってほしいです。
坂井まなぶ
:神奈川5区(戸塚区、瀬谷区、泉区)・自民党
彼が財務副大臣時代のこと。
経済的に困窮する犯罪被害者家庭の子どもたちへの奨学金(まごころ奨学金)があったのですが、それが「貸与型」で非常に使いづらい、という話が、現場から僕のところにありました。
で、坂井さんに「せっかくの奨学金があるのに、貸与型っていうことで全然使われていないのは、もったいなすぎませんか?」とお会いしたついでに、お伝えしたんです。
細かい案件だし、ちょこっと話に出しただけなんで、そんなに期待してなかったのですが、その後、この記事が。
犯罪被害者子供の奨学金 「貸与」から「給付」へ、金融庁が預保納付金の使途拡充
http://www.sankei.com/economy/news/160218/ecn1602180004-n1.html
被災地支援に一生懸命だったり、とにかく動き回って汗をかいて頑張ろう、という泥臭いタイプの議員さん。決してメディアで取り上げられるようなタイプではありませんが、こういう議員のことも僕たちは忘れてはいけないな、と思うのです。
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子ども子育て支援に前向きな政治家が増えれば増えるほど、子どもの政策は前進します。しかし、一般的には誰が「本当に関心があるか」は見えづらい。
人となりを知る人が、「政党はどうか知らんが、あの人はこどもアライだよ」と声をあげていくしかありません。
そして、子ども子育てだけではありません。
「障害者のアライはあの議員だよ」「この候補は、LGBTのアライだよ」と、それぞれの分野でどんどん周囲に伝えていけば良いのです。そうすることで、支援の手が足りないフィールドが、ちょっとずつ前進していくのだと思います。
皆さんも、関心領域のアライ議員に、一票を投じてみてはどうでしょうか。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年10月19日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。