値上げより内容量減を選んだのは会社員根性と経済のせい

Twitterで少し話題になった下記のハッシュタグですが、いろいろなものがどんどん内容量が減っているという話題です。例えばカントリーマアムは値段は変わらないのに量は減ったり、6Pチーズが全体的に小さくなっているという話です。

#くいもんみんな小さくなってませんか日本

確かに私も500mlのミルクティーと思って買った、リプトンの紙パックが470mlだったと知ってショックでした(笑)

しかしこれサラリーマンの気持ちを考えれば当たり前の結果と言えるでしょう。

値上げより内容量減を選んだのは会社員根性と経済のせい

あなたなら値上げ交渉しますか?

値上げしないで内容量を減らすというのは簡単に言えば原材料費や加工費があがっていることが大きな理由でしょう。アジアで加工・袋詰している商品が、工場の人件費が上がってしまったであるとか、輸入している原材料費が上がってしまったということがメインかと思います。

この場合、皆さんが営業担当・責任者だったらどうしますか?クッキーやポテトチップス、飲料などを作っているメーカーがイオンやセブンイレブンなどの小売に「原材料の値段が上がったので卸値を上げさせてもらいます」といいますか?それとも「内容量を減らしましたが、卸値は同じにしています」と言うでしょうか?

まずサラリーマンであれば十中八九、値上げするよりも内容量を減らす方を選ぶでしょう。

会社員に値上げするインセンティブはない

もし値上げ交渉をするとした場合、かなり厳しい営業になるでしょう。卸値を上げさせてくれ、なんて言えばセブンイレブンやイオンは「じゃあもういいよ」と言われかねません。ただでさえプライベートブランドも当たり前に作られている時代ですし、メーカーよりも小売の方が交渉に強いわけですから、メーカー側が値段を上げることは至難の業です。

それでも粘り強く交渉を続けるという方法はあるでしょう。しかし値段を上げたところで会社員であるあなたの給与は上がりません。であれば、内容量を減らして同じ価格で卸売をするほうが圧倒的にラクです。説明もしやすいし、メーカーとして社内の稟議も通りやすいでしょう。ストレスも少ないでしょう。

こうして今、昔よりも内容量の減った商品を皆さんは同価格で購入しているというわけです。

行動経済学のプロスペクト理論

行動経済学にプロスペクト理論というものがあります。詳しくはウィキペディアをご覧ください。簡単に言えば人間は目の前に利益があれば、その利益が手に入らないリスクを回避し、損失が迫るとその損失を回避しようとする傾向にあるということです。

つまりこれをお菓子やジュースなど食品の内容量減に当てはめるとこうなります。

すでに購入してもらっている商品の原材料費が上がって⇒値上げするか内容量を減らさないと利益を確保できない⇒値上げしたら買ってもらえないかも知れない(損失の回避)⇒じゃあ内容量を減らしたほうがいい

というような具合です。

このように食品の内容量が減ってしまうのも当たり前であり、リスクを避ける傾向にある人間の現象としては当然の方向に進んだと言えます。

経済成長と給与が増えれば避けられたかも

しかしこれは「値上げしたら買ってもらえなくなる」という前提で作られた仮説です。もし経済成長し、給料もどんどん右肩上がりで増えていたらどうでしょうか?少しくらいの値上げでも、小売店も消費者は受け入れていたかもしれません。

つまり値上げせずに内容量を減らすという決断をメーカーが下した背景には、行動経済学のプロスペクト理論もさることながら、日本経済及び日本国民の所得が増加していないということが大きな理由なのではないでしょうか

実際、ラウンドワンは営業利益が5年ぶりに増益になったのですが、社長が「(アルバイト代の)時給の上昇で、若い世代の所得があがったからだ」とコメントしています(参照)。売上高も上がっており、増収増益になっているその背景には主要顧客である若い人たちが、時給の高くなったアルバイトのお金が流れたと考えられています。

サラリーマン・会社員の行動によってお菓子や食品の内容量は減っているのは間違いないと思いますが、そのサラリーマン・会社員にとって給料が上がらない中、内容量減に舵を切るのは合理的な判断なのかもしれません。