AfDの登場で独連邦議会は変わるか

ドイツ連邦議会選挙(下院)後、連邦議会(任期4年)の初の本会議が24日、ベルリンで開催された。同連邦議会は6政党、7グループから構成され、議員総数はこれまでは631議員だったが、今回は過去最大の709議員に膨れ上がった。議員の平均年齢は49・4歳で女性議員の割合は30・7%だ。

▲ドイツ連邦議会本会議で新議長を選出(2017年10月24日、連邦議会公式サイトから)

今議会の特長は、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が初めて連邦議会の議席を占めたことだ。2013年に結成された同党は9月24日の総選挙で外国人排斥、反難民政策を訴え、約12・6%の得票率を獲得し、第3党に大躍進、94人の議員を獲得した。(同党のフラウケ・ペトリ―党首が党内の対立から同党を脱退し、無所属となったほか、マリオ・ミールフ氏が同じように同党を脱退し無所属。そのため、AfDの議員数は92人となった)。

本会議の最初の議題はノルベルト・ランメルト議長の後任選出だ。与党第1党の「キリスト教民主同盟」(CDU)と「キリスト教社会同盟」(CSU)が擁立した財務相だったヴォルフガング・ショイブレ氏(75)が党派を超えた支持を得て、第1回投票で新議長に選出された。ショイブレ氏は議員歴45年の大ベテランだ。ギリシャの金融危機では大活躍した。

6政党から6人の副議長選出では、AfDが擁立したアルブレヒト・グラ―サー議員が3回の投票でいずれも選出に必要な票を獲得できずに落選した。具体的には、第1回投票で賛成115、反対550、棄権26、2回目は賛成123、反対549、棄権24、3回目の投票で賛成114、反対544、棄権26に終わった。
この結果、AfDは次回会期で新しい候補者を出すか、グラ―サー議員を再度立候補させるかを決定しなければならない。ショイブレ新議長によれば、次回の会期は11月20日から始まる第47週に開かれる予定だ。

CSU、「同盟90/ 緑の党」、自由民主党(FDP)、そして左翼党 の副議長候補者は1回の投票で選出されたが、グラ―サー議員が落選した主因は、同氏が今年4月、反イスラム発言をするなど、その政治信条に他党議員から警戒の声があるからだ。
グラ―サー議員は、「われわれは宗教の自由に反対していないが、イスラム教は宗教の自由も知らないし、それを尊重すらしていない。そのようなイスラム教に宗教の自由を保障する基本法を適応する必要はない」と述べ、反イスラム色をはっきりと表明している。

選挙後の初の本会議では通常、議員同士が挨拶したり、語り掛けたりする。当方はドイツの民間放送で連邦議会初日を見ていたが、メルケル首相はAfDのアレクサンダー・ガウラント共同党首の席を通り過ぎた時、わずかに笑みをみせただけで握手はなかった。他の多くの議員もAfD議員を一瞥するだけで挨拶したり、握手を求めるシーンはなかった。極右議員との接触を恣意的に避ける議員たちが多いことが分かる。AfDの議員の中には、反ユダヤ主義的発言をし、物議を醸した者もいることは事実だ。

ショイブレ新議長は就任演説で、「議会で激しい舌戦は当然だが、一定のルールを守ってやってほしい。フェアネスだ」と議員たちに呼びかけた。AfDが加わったことで、連邦会議が激しい議論の場となる可能性が高まってきた。議論を戦わすことは議会民主主義にとってはいいことだ。AfD議員にとっても他党の意見を聴く機会となる。

メルケル首相主導の第4次政権の発足が遅れているが、CDU・CSUとFDP、「同盟90/ 緑の党」の3党の“ジャマイカ連合”政権が誕生することは確実だ。いずれにしても、AfDが連邦議会に登場したことで、同国の政界がこれまで以上に流動的になるのは間違いないだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。