メルケル首相の指導力に陰りも

どの国でも連立交渉のテーブルから最初に離脱を表明した政党はその後、他の政党ばかりか、有権者からも批判や制裁を受けるものだが、ドイツの場合はちょっと違うようだ。独週刊誌シュピーゲル(電子版)は21日、世論調査研究所Civeyとの協力で実施した選挙傾向の世論調査を報じたが、それによるとメルケル首相が率いる「キリスト教民主、社会同盟」(CDU/CSU)、「同盟90/緑の党」とのジャマイカ連立交渉から離脱を宣言したリンドラー党首の自由民主党(FDP)が支持率を伸ばす一方、CDUが支持率で初めて30%を割るという結果が明らかになった。

▲ジャマイカ連立交渉が挫折したことを表明するメルケル首相(CDU公式サイトから)

リンドラー党首は連立交渉から離脱宣言した直後、有権者や他の政党からの批判に対し、「政党としての信条を放棄してまで政権に参加する考えはない」と言明し、懸命に離脱宣言の背景を説明、理解を求めたが、シュピーゲルは「その必要はないようだ」と指摘し、FDPの支持が伸びているというのだ。

先の世論調査は連立交渉暗礁直後の20日から21日にかけ5044人を対象にオンラインで実施されたもので、「日曜日に連邦議会選挙が実施された場合、どの政党を支持するか」という質問に対し、FDPの支持率は13・3%で離脱前より1・7ポイント増えた。

その他、「同盟90/緑の党」も急増し、11・9%で1・5ポイント上昇し、「左翼党」も微増した。一方、メルケル首相のCDU/CSUは29・2%で30%台を割った。同様に、第2党のシュルツ党首の「ドイツ社会民主党」(SPD)は19・5%で遂に20%を下回った。2大政党が支持率を失う傾向は続いていることが明らかになった。

シュルツ党首は連立交渉挫折直後、CDU/CSUとの大連立政権の再現について、「9月24日の連邦議会選の結果で国民が大連立政権をもはや支持していないことが明らかになった。両党で14%近くの得票率を失ったのだ。わが党はメルケル首相との連立政権はもはや考えていない」と強調し、「わが党は新たな選挙を恐れていない」と豪語していたが、世論調査はSPDの支持率低下は止まらないことを端的に示している。シュルツ党首の周辺から「大連立を組む方がベターかもしれない」といった声が飛び出してきている有様だ。

ちなみに、シュルツ党首は23日、ベルリンの大統領府を訪れ、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領と今後の政局について話し合う予定だ。SPD出身の同大統領自身は「再選挙には消極的」といわれるだけに、シュルツ党首に大連立政権発足に向け説得するのではないかとみられている。

一方、2013年に結成し、9月の総選挙で連邦議会に初めて議席を獲得した新党「ドイツのために選択肢」(AfD)は連立交渉が暗礁に乗り上げた直後、「メルケル政権の終焉を告げた。新たな選挙を実施すべきだ」と宣言、更なる飛躍を目指しているが、世論調査によると、1・5ポイント支持率を減らしている。

ジャマイカ連立交渉が行き詰まった直後に実施された世論調査を見る限りでは、「新たに選挙を実施したとしても政党間の勢力図に大きな違いはなく、最終的には第2ジャマイカ連立交渉を再開するか、大連立政権を樹立する以外の他の選択肢はない」という現実が改めて浮かび上がってくる。

メルケル首相は、「総選挙の第1党として安定政権の樹立を目指す」と強調しているが、同首相の辞任を求める声が与・野党やメディアの一部から聞かれ出した。“欧州の盟主ドイツの顔”といわれて久しいメルケル首相の辞任を求める声は過去、囁かれたことすらなかった。メルケル首相はその政治的指導力を確実に失ってきているわけだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。