あなたが失敗したときの唯一の味方は誰だ?

写真は書籍表紙。田中氏より提供

「頑張っているのに、なぜか毎日が楽しくない」「将来のことを考えるにはどうすればいいのか」。そんなこと思い、日々モヤモヤしている人はいないだろうか。今回紹介するのは、『群れない。ケンブリッジで学んだ成功をつかむ世界共通の方法』。なお、アゴラ出版道場でもお世話になっている、秀和システムの田中氏が編集を担当している。

著者は塚本亮氏。偏差値30台の不良から、やがてケンブリッジ大学院まで進み、卒業後は、若者に生き方を指南してきた一冊になる。最近は、柔らか系が主流だが、パンチが効いている硬派な内容だ。なお、塚本氏の著書には、11万部のベストセラーを記録した『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)などがある。

失敗したときの味方は誰だ

――個を確立するには孤独がともなう。自らを信じて貫かなくてはいけないからである。周囲からは好奇の目で見られ、心が折れそうになるかもしれない。

「僕はかつて、ケンブリッジの大学院に進学したと同時にビジネスを始めたことがあります。オークションサイトを利用して、日本にはない商品をイギリスから販売してみました。すぐに日本人の初任給くらいの収入を得ることができました。卒業後もそれを続けるかどうかで迷いましたが、結局、僕は続ける方を選びました。」(塚本氏)

「周囲からはそんなビジネスが続くわけがないと言われます。途中、取引先にだまされたり、人から裏切られたりと、ひどい経験もしたし、自分の力量のなさに絶望したこともあります。しかし、今でも僕は、自分でそのビジネスを続けています。」(同)

――塚本氏は絶対にやめないと決めていたそうだ。それには、多くの起業家が、大失敗を経験しても決してあきらめなかったという情報がインプットされていた。

「そして、そうした経験から、僕はあることをつかみます。それは、『自分を最後まで信じられる唯一の人間は、自分しかいない』ということです。さらに僕は、自分のビジネスの経験から、もうひとつだけ大切なことを学びます。それは、『人間は、失敗をしないとなにもつかめない生き物』だということ。」(塚本氏)

「現代人なら、とにかく失敗なんかせず、楽して儲けたいと誰もが思っているでしょう。時代の流れでしょうか、とにかく効率的に大きな果実を得たいという風潮が、世間には溢れています。しかし、人が生きていくということは、とどのつまり失敗の連続であること。少しでもそんな経験をした人であれば、わかってもらえると思います。」(同)

――「腑に落ちる」ということ。失敗しても腑に落ちなければ本質を理解できない。塚本氏は、頑固であることから、人からのアドバイスを聞かない。だから、人の数倍もの失敗をすることがある。そうした失敗の経験は、身体にしっかりと染み込んで直感が研ぎ澄まされ、物事への判断力が高くなるきっかけにつながっているそうだ。

「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる」。これは、松下幸之助氏の有名な名言として知られている。

社会のニーズがあるかを検証する

――このようなケースがある。A氏は、中学生の頃から将来、「教員」になることを夢見ていた。当時はドラマの影響もあり、「教員」はなりたい仕事NO1だった。そして、教員養成課程がある国立大に入学する。教員試験にも一発で合格したが就職先が決まらない。その頃、教員はあぶれていた。少子化の影響もあり、すっかり斜陽になっていたのである。

「よりよい未来を信じて頑張ることももちろん悪い事ではありません。それは”今を生きている”とは言えません。もし未来のために日々我慢することに慣れてしまっている人は、再び未来のためにと言い聞かせて人生を終えていくでしょう。それでは目の前にニンジンをぶら下げて走る馬となんら変わりません。」(塚本氏)

「資格取得がいい例です。僕には教員免許どころかカウンセラーの資格もありません。だけど、多くの学校から講師の依頼が殺到して仕事が舞い込んできます。資格のために頑張っても、社会から求められるかどうかは、まるで別の話ということです。」(同)

――参考までに、ケンブリッジ大は、ハーバード大、シカゴ大、オックスフォード大等と並び世界大学ランキングでトップレベルの評価をされている。英国の「The Times」が発行する「The Times Higher Education」(2018)では、2位となっている。

ケンブリッジで、塚本氏は自分の生き方が世界では当たり前であることに気がついた。挑戦し勇気をもてば「群れる」必要性はなくなる。人にどう思われているのか、人がなにを考えているかを気にしてばかりの人。このような人に一読をおすすめしたい。

参考書籍
群れない。ケンブリッジで学んだ成功をつかむ世界共通の方法』(秀和システム)

尾藤克之
コラムニスト