【映画評】パーティで女の子に話しかけるには

渡 まち子

1977年のロンドン。パンク好きなのに内気な少年エンは、偶然もぐりこんだ風変わりなパーティで美少女ザンと出会う。大好きなパンク・ミュージックやファッションの話を熱く語るエンと、それに共感したザンは、互いに惹かれあい恋に落ちる。だが、ザンは遠い惑星からきた異星人で、あと48時間後に地球を去らねばならなかった。大人が決めたルールに反発した二人は、大胆な逃避行に出る…。

パンク少年と異星人の女の子の運命の恋を描く青春ラブ・ストーリー「パーティで女の子に話しかけるには」。原作は小説家&コミック作家ニール・ゲイマンによる小説だ。1977年のロンドンの熱気は、想像するしかないのだが、パンクに夢中の若者は、大人たちの目には、理解不能の異星人のように映っただろう。そんな主人公が本物の異星人の美少女と恋に落ちる。一見突拍子もない設定に思えるが、ベースとなるのは、既成のルールに反発し、自らの生き方を貫く“同志”の男女の、普遍的な恋愛なのだ。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督は、社会から少しはみだした人々にあたたかいまなざしを注ぐ俊英監督。この切ないラブ・ストーリーは、SF的要素まで動員して、ポップで魅力的な作品に仕上がっている。何しろ異星人の美少女ザンを演じるエル・ファニングが最高にチャーミングだ。レトロ・モダンなファッションに身を包んだ異星人たちが繰り広げる噛み合わない会話や謎のパフォーマンスなども、独特のユーモアに彩られていて、思わずクスリと笑える。そしてザンがパンクバンドのボーカルとして熱唱するライブシーンの、何と魅力的なことか!パンクのゴッド・マザー役のニコール・キッドマンの暴れっぷりもいい。ラスト、大人になったエンのもとにやってきたのは…。心優しい感動が一気に押し寄せる。音楽、ファッション、アニメまで贅沢に詰まった甘酸っぱいラブストーリーは、ブッ飛んでいるのにどこまでもピュア。これは間違いなく、はみ出し者たちへの応援歌だ。
【75点】
(原題「HOW TO Talk TO GIRLS AT PARTIES」)
(アメリカ/ジョン・キャメロン・ミッチェル監督/エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン、他)
(ボーイ・ミーツ・ガール度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年12月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。