「野菜を350g食べている人は5%」にうろたえる必要はない

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

「毎日野菜を食べましょう!」と野菜の摂取を勧められるこのセリフはあなたも必ず一度は耳にしたことがあると思います。私も年齢とともに健康への意識が高まり、最近では一日350gを大きく上回る量の野菜をモリモリ食べています。

さて、そんな健康イメージのある野菜ですが、現代人、特に若い年代で不足が深刻であるというデータが発表されました。カゴメ社が20~59歳の男女410人に対して行ったアンケート調査によりますと、野菜を一日350g以上食べている人はたったの5%というものです。これを聞くとどう感じるでしょうか?「うわー!いよいよ健康問題が深刻化するぞ!?」とそのように思われるでしょうか?

しかし、「野菜をたくさん食べないといけないのに、食べられていない…」と罪悪感を抱くのはちょっと待って下さい!健康になるには本当にそんなに分量を取らなければいけないのか?など冷静に考える必要があります。

野菜にしか含まれていない栄養はない

「野菜は低カロリーだからたくさん食べても太らない!」

「ビタミンやミネラルが豊富」

野菜をとりまく意見というのはこうしたものがあります。「野菜信仰」とでもいうべきでしょうか?「とにかく野菜野菜!野菜が重要だ!」という感じで語られているのをよく見ます。しかし、究極的にいえば、絶対に野菜でなければいけない必然性ってどこにもないと思うんですよね。低カロリー食なら、鳥のささ身も低カロリーですし、ビタミンやミネラルは果物や肉などにも含まれています。「この栄養素は人体に必須で、あいにく野菜の中にしかない」というものはあるのでしょうか?その答えはNo。野菜にしか含まれていない栄養がない以上、他の食材でそれを摂取しても問題はないわけです。

栄養素が下がっている今の野菜

野菜への過度な信仰は考えものです。さて、理解しておかなければいけないのは「現代の野菜はもはや昔の野菜とは違う」という事実です。味も栄養も色もどんどん薄くなる食卓の野菜たちという過去記事でも書きましたが、今の野菜は色も栄養素も昔に比べて薄くなっているというデータがあります。例えばほうれん草を見てみましょう。

ほうれん草 100gあたりの栄養量

ビタミンC      鉄 分
1950年 150 13.0
1982年 65 3.7
2000年 35 2.0

※数字はmg(ミリグラム)

 

この50年間でビタミンCは23%に、鉄分は15%に、カルシウムは50%になってしまいました。「自分は野菜を食べているからヘーキヘーキ」と野菜を過信しても、その食べている野菜は自分が考えているほど栄養豊富な食材でない可能性があります。

「ただし、旬の野菜はそれほど栄養素が落ちていない」との主張もあるので必要以上に肩を落とす必要はありません。ですが、「時期とものによっては、野菜は栄養素が思っているほどないものもある」という冷静な事実を理解しておくことは重要です。

都会で野菜を食べるのは贅沢?

食事代をケチる生活をすると真っ先に不足するのが「野菜・果物」です。どうしてもタンパク質や炭水化物に比べると、カロリー辺りの単価は高くなりますし、外食などではそもそも野菜をモリモリ食べられるお店が多くないという事実が立ちはだかります。

「一日350gの野菜を食べましょう!」という健康目標が悪いのではありませんが、350gというのはなかなかの分量です。次の写真を見てください。この分量の野菜を毎日食べるというのは、かなりのハードルです。

画像引用元:フードモデルドットコム

これだけの分量の野菜を買い、そして調理して毎日食べるという手間の問題と経済的な問題が同時に立ちはだかります。言わずもがな、都会人ほど仕事や共働き率が高く、野菜も高いですから野菜摂取量も田舎に比べて低いことが予想されます。「都会で毎日たくさんの野菜を食べる」というのはある程度経済的、時間的余裕が必要な行為といっていいでしょう。

しかし、だからといって「都会人=野菜を食べないから短命」とはいえません。仮に野菜の摂取量が「田舎>都会」という仮説を立てて、厚生労働省が平成22年に発表した都道府県別にみた平均余命によると意外な結果が見えてきます。日本の首都、東京都の男女の平均寿命は全国平均を上回っているというデータです。

男性79.82歳(全国平均79.59歳)

女性86.39歳(全国平均86.35歳)

こうなると必ずしも「野菜の摂取量=健康・寿命」とは言い切れないかもしれません。

それでも野菜は食べたほうがいい

ここまでさんざん「野菜を過信するな」「他の食材でも栄養は得られる」といってきましたが、それでも野菜はできるだけ毎日たくさん食べたほうがいいと思います。

野菜は他の食材に比べると、次のようなメリットがあります。

・gあたりのビタミンやミネラル、食物繊維が豊富

・加熱することでかさを減らしてたくさん食べられる

・アクを取り除いて食べれば害になる要素が少ない

その他の食材は考えなしに食べると栄養が偏ったり、脂肪を取りすぎてしまいがちです。そのため、野菜や果物なしで栄養豊富な食生活を実現するとなると、かなり栄養計算をしなければいけません。しかし、野菜はとてもシンプル。とりあえず「野菜」カテゴリにあるものなら、旬のものを選んでまんべんなく食べておけばそれだけで幅広い栄養摂取が出来ます。また、加熱して味付けをして冷凍しておけば、栄養豊富な非常食にもなります。

野菜を過信する必要はありませんし、350gに囚われすぎるのも考えものですが、うまく活用することで健康効果を得られるので賢く付き合いたいものです。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。