“手書き”を有効に活用する方法

荘司 雅彦

昨今、手書きの履歴書を提出する就活生がたまにいるそうです。真心を込めて手書きで書くことで、熱意を示そうとしているのかもしれません。

しかし、企業の採用担当者の印象は概ねネガティブのようです。理由はいろいろありますが、活字に比べて読みにくいというのが第一でしょう。

ところで、拙著「説得の戦略」P83でご紹介した、ランディー・ガーナーが行った次のような実験があります。

1 調査票の記入をお願いしますと手書きで記入した付箋をカバーレターに貼ったもの。

2 直接、カバレターに同じメッセージを手書きで記入したもの。

3 カバレターと調査票のみ。

の3種類で、調査票の回収率を実験したのです。

その結果、1の手書きの付箋付きは75%以上の人が記入して返送してくれました。2の手書きだけのグループは48%、3の何もなしは36%という結果でした。

しかも、1の手書きの付箋付きの調査票のほうが、ほかの調査票に比べて、より詳しく丁寧な回答を書いてくれたそうです。

ガーナーは、「わざわざはがしやすい付箋を用意して、自分あてに手書きのメッセージを書いてくれた相手の手間と心遣いを感じ取り、それに報いようという気持ちになった」と分析しています。

このように、活字全盛の時代に「手書き」のちょっとした心遣いをするだけで、受け手の心情は大きく変わってくるのです。

では、どうして「手書きの履歴書」が採用担当者たちに不評なのでしょう?

履歴書を提出する行為は、「内定をもらう」という見返りを期待しているからだと私は考えています。

ある意味ビジネスと同じ有償行為なのです。

受け取った採用担当者としては、「熱意を示して他の就活生と差をつけよういうつもりだろうが、読みにくいだけで不愉快だ」と感じてしまうはずです。

先ほどの調査票の例は、回収率を上げたからといって配布した人の利益につながる訳ではありません。純粋に無償の好意から出たものです。

つまり「見返りがないのに、自分のために小さな心配りをしてくれた」ということが重要なのです。

もし、就活生が「手書き」を活用したいと思うのであれば、インターン等が終わった後に、お世話になった人たちに簡単な手書きの葉書でを出しておくことをお勧めします。

絵葉書に「感謝の言葉」を一言二言添えるだけでもいいと思います。

封書だと仰々しいし、開封する手間が必要なので葉書に簡潔に書くことをお勧めします(くどくどと書くのは逆効果です)。

このような絶好の機会にメールやラインでお礼を書いている就活生が、手書きの履歴書を提出していたのでは…私が担当者でも採用したくありません(^^;)

荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年12月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。