クリスマスツリーは枯木だった?

欧州最大のクリスマス市場、ウィ―ン市庁舎前広場には当然のことだが、クリスマスツリーが飾られている。毎年、ツリーは異なった州から運ばれるが、今年はフォアアールベルク州から運ばれた高さ25メートルの松の木だ。先月15日には、来年辞任予定のホイプル市長がツリーのスイッチを入れると、飾られたイルミネーションが一斉に点灯された。ツリーは、クリスマスが終わるまで輝いている。

▲クリスマスツリーと相性が悪いローマのラッジ市長(ラッジ市長のフェイスブックから)

ところで、クリスマスツリーが生き生きと飾り付けられているから、市場の雰囲気も盛り上がるが、そのツリーが運び込まれた段階で既に生命力を失った枯木だったらどうするか。クリスマスの雰囲気が失せてしまうだろう。

そんな考えられないことがイタリアのローマであった。イタリア共和国トレンティーノ=アルト・アディジェ州トレント自治県の北東部に位置する谷、ヴァル・ディ・フィエンメ谷から採木された松が今月初めローマのヴェネツィア広場に運び込まれたが、樹木の専門家が直ぐにその松の木が既に枯れているのに気が付いたのだ。ローマまでの運送中に松の木が死んでしまったわけだ。松の木の運送コストはほぼ4万ユーロだったが、運送中に松の木が傷ついてしまったのではないかというのだ。

松の枝は哀れにも垂れ下がっている。インターネットのユーザーたちはツリーを早速洗面所用ブラシだと揶揄している。ツリーに自らスイッチを灯したラッジ市長への嫌味もあってか、ツリーは“禿の枯木”と呼ばれているというのだ。

消費者保護協会(Codacons)はヴェネツィア広場からクリスマスツリーを片付けるように要求。「クリスマスツリーは市民と旅行者に醜悪なイメージをを与えるだけだ」とその理由を説明している。
ツリーはクリスマスが終わるまで生き延びないのは誰の目にも明らかだった。Codaconsのカルロ・リンツィ議長は、「枯木のツリーの写真はローマの町を世界の嘲笑の的にしてしまうだけだ」というのだ。

ところで、ヴェネツィア広場のクリスマスツリーでローマのブルジニア・ラッジ市長は昨年も批判されている。「五つ星運動」所属のラッジ市長は昨年も他の政党政治家たちから同じように“枯れたクリスマスツリーだ”という批判を受けたばかりだ。

ラッジ市長(39)は昨年6月、マッテオ・レンツイ氏が率いる与党「民主党」の対抗候補を破り、イタリアで初の女性市長に当選した才媛だが、クリスマスツリーとは相性が悪いのだろうか。それとも、イタリアで最初のローマ市長に当選した才媛ラッジ女史への嫉妬と嫌がらせがクリスマスツリー批判となって跳ね返っているのに過ぎないのだろうか。
AFP通信が配信したツリーの写真を見る限りでは、撮影の角度もあるだろうが、やはり生き生きとした感じはなく、お化け屋敷のツリーといったイメージが浮かんでくる。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。