大相撲の一連の騒動は非常に不可解な様相を呈してきた。しかし、確実にいえることは、八角理事長と貴乃花理事の確執だろう。これは、メディアで放送された様子などからもわかりやすい。双方が正面を向かい合い睨みを利かせている。かつての東映映画を見ているような迫力だ。しかし、これは会議のあり方にも問題がありそうだ。
だったら会議のプロに聞けばヒントがわかるかもしれない。沖本るり子さんは、「5分会議」を活用した、人財育成や、組織活性化の講師・コンサルタントとして活動中。TBS報道番組Nスタで“プレゼンの達人”と紹介された。近著に、『生産性アップ! 短時間で成果が上がる「ミーティング」と「会議」』(明日香出版社)がある。
対立した会議をすすめるテクニック
過去のしがらみや旧体質を改善をしようとすると組織の内部でコンフリクトが発生する。従来の体制を維持しようとする勢力が大半で、そこに対峙する流れになるのだから対立は一層先鋭化していく。沖本さんは、まず座席の座り方に問題があると指摘する。
「対立させる構図を座席で改善することは可能です。本来は、人数6名以上だと、島型にして対立させない工夫をしますが、今回のような対立ありきの座席なら、特に八角理事長と貴乃花理事が対面で座ってはいけません。心理学的に隣に並んで座った人とは対立しにくいので、あえて、隣同士になるように座席を決めてもいいでしょう。」(沖本さん)
「また、会議の目的や内容が不明瞭です。貴乃花理事が文書を配布し、回収したとのことですが、この会議は何のために開き協会側はどうしたかったのでしょうか。そもそも、こじれている様子から、1回の会議で上手くいかないことは明らかでしょう。複数回は話し合う必要はあると思いますが、だったら目的や内容は明確にしたほうがいいです。」(同)
「貴乃花理事に改めて話を聞いたうえで、28日の理事会で処分を決める方針」と報道されているが、これは、経営会議でありがちな吊るし上げ会議とも似ている。
「処分を決めることが目的でしょうか?本来なら、世間からの批判を鑑みたうえで、今後、改善するための施策を協議する場ではないでしょうか。そのために、会議の開催の予定をたて、会議の目標を設定し、八角理事長と貴乃花理事はもちろん、他の参加者にも周知させることが必要です。会議の時間表も詳細に計画します。」(沖本さん)
「もし、今回、貴乃花理事から事情を聞いて、処分をすることを目的とした場であるなら、その目的を明確にした会議にすべきでしょう。また、報道によれば、八角理事長から『何かありますか』と問われた貴乃花理事は『読んでもらえれば』と答えたとされています。これでは、より溝を深めるばかりで得策とはいえません。」(同)
議事進行役が「何かありますか」と質問したときは、意見はでてこないものだ。「何かありますか」というすすめ方も、漠然としすぎている。また、会議が紛糾した場合などは、進行役の力量が大きく問われる場面でもある。どうすべきか。
「会議のなかで出てきた視点や論点を踏まえて、全員が発言する方針に変えることです。たとえば『暴力について何かありますか?』と聞かれても、答えは出てきません。『暴力についてはAとBの意見が出ました。まずは、Aについて、利点のみを各自ご意見ください』と視点や論点を掘り下げれば自分の立場で意見を言いやすくなります。」(沖本さん)
「自分の立場で意見を言えるようになれば、当事者意識が変わっていくものです。みんなが意見を言える場を作り、空気をかえていくことです。今のままでは、貴乃花理事は発言をせずに、文章で配布する読書会になってしまうのではないでしょうか。」(同)
乗り越えれば一致団結につながる
では、そろそろまとめにはいりたい。座席は、八角理事長と貴乃花理事が隣同士に座ること。そして、会議の目的と目標を明確にして、会議開催予定を事前に公開すること。さらに、開催される会議は、視点に分けて、時間表を作成する。全員が意見を言えるように視点に分けたテーマで話をすすめることが肝要だろう。
「なおかつ、あとで、言った言わないとならないためにも意見は全部書き残すことが大切です。しかも、今回の会議は全員が順番に書記の役割をしてもいいでしょう。全員が参加することで、一致団結につながることもあります。」(沖本さん)
もちろん、テーマは、今後の施策を協議する場にする。吊るし上げ会議は人間関係がますます悪化するだけである。「おかしいこと」は「おかしい」といえる場、そして、地位役職が関係ない意見を言える場に変えなければいけない。そのために、参加者全員が肯定的意見と否定的意の両方を発言する場にしなければいけない。
尾藤克之
コラムニスト