もっと光を。ソーラーチャレンジの機は熟した

新年あけましておめでとうございます。Nick Sakaiです。海外から日本にベースを移してちょうど一年が過ぎました。昨年は本当に良い一年でした。アゴラに投稿を続けたおかげで、電力IoTを志す様々な方々が連絡をしてきていただけました。

大手企業の中の人々や、ブロックチェインの専門家、ハーバードを出てベンチャーを立ち上げた若者、某世界的イベントのプロデューサーなど、様々なバックグラウンドを持った熱い思いの方々です。こうした方々と話し込むうちに私の仮説は確信に変わりました。そして、これら同志の皆様と私が昨年6月に設立した株式会社電力シェアリングを核としてスタートアップの準備を着々と進めています。

その確信とは、次の3つのことです。

第一に、世界の電力業界は、5年以内に脱炭素化(Decarbonization), 分散化(Decentralization),デジタル化(Digitalization)をドライバーにビジネスモデルと業界地図が大転換するということ。

第二に、そのパラダイムシフトを主導するのは、巷間言われる米国のイーロンマスクでもなく、中国の習近平でもなく他ならぬ日本のベンチャー界隈であるということ。

第三に、電力で火が付く社会の大転換は、グローバリズムに出遅れた日本経済と社会の再生をもたらすということ。

新年早々大言壮語だな、と読者の皆様から様々な角度から突っ込まれそうですが、新年の誓いの備忘録として、その理由を書き留めます。まず図で表すと下のようになります。

私の予想する反論は概ね以下のものだと思います。

(1) 「太陽光なんてもう流行らない。メガソーラーのアクセス拒否や、北杜市の景観破壊を見ろよ」

(2) 「仮に、 太陽光が来ても、日本ではないだろう。テスラの米国や、環境先進国ドイツ・デンマーク、広大な砂漠が広がる中東、或いはしたたかな中国が先を越すだろう。」

(3)  「電力が高齢化と人口減少で沈みゆく日本を救うなんてありえないだろう。」

確かに今、日本では「ソーラー疲れ」とでもいう現象が起きています。東日本大震災の終わりに菅直人が1kWhあたり42円という無茶苦茶高い水準の固定価格買取制度(FIT)を残して退陣していきました。

私は、その当時アジア開発銀行で経済産業省と一緒に海外での再生可能エネルギーの普及を進めるために、FITの詳細設計を詰めていた担当課長補佐と話す機会がありました。その当時既にインドでは、入札制度が普及していて1kWあたり15円程度にまで下がっていたので、私が「なんで入札制度を導入しないんですか?42円なんて高すぎですよ」と言ったら、「上が決めたことだからね」と力なく笑っていらっしゃったのが今でも心に残っています。

実は、太陽光の「健全な」普及を妨げていたのはFITそのものであったのですね。再エネ賦課金で託送料金は上がるは、九州ではメガソーラーが尋常じゃないレベルまで埋め尽くして、送電線に悪影響を及ぼし、九州電力と接続拒否問題でいざこざを起こすは、山梨県北杜市の別荘地の山の斜面に太陽光パネルが埋め尽くして景観破壊を起こすは、今や太陽光は国全体の迷惑扱いです。

そもそもFITには構造的に致命的な欠陥があります。それは、(1)全国一律の値段で買い取って、(2)地元で使わず中央市場に吸い上げて、(3)石炭など綺麗ではない電力とまぜこぜにして消費者に売る制度だということです。

業者の立場になって考えてみてください。どこでも同じ値段で買い取ると言われたら、どこに太陽光発電所を立てますか?それは、土地が安くて、お日様が照っているところですよね。それが、九州の地方部(例えば阿蘇山)であり、北杜市ですよね。でもそこには、それほどの電力需要はないのです。だから、余った電気を九州の都会や本州に送らなければいけない。そのために送電線を作らなければいけない。それを渋る電力会社が槍玉に上がりますが、でもよく考えてみてください。そうしたら結局そのコストはまた電気料金という形で消費者に転嫁されるのです。

私は今便宜的に「余った電気」と言いましたが、実は余っていない電気も阿蘇山で作った電気は全て東京の市場に運ばれるのです。これでは阿蘇山や北杜市の住民には何の恩恵もない。だから迷惑施設になるのです。

魚に例えてその無茶苦茶加減を説明しましょう。例えば、大分漁港で関サバが水揚げされるとする。多くは築地に運ばれるのでしょうが、一部は漁師さんが地元の商店や知人に流すでしょう。そうしたら、地元の人たちは、新鮮な魚を東京よりも安い値段(物流コストがかからない)で楽しめますよね。魚が生臭いから市場は迷惑施設だという人はいないでしょう。地元に恩恵が行き渡るからです。

でも、こう言われたらどうでしょう。「これからは大分漁港で揚がった関サバは全量国が買い上げるから地元での横流しは禁止。一旦東京に運んで、フィリピン沖で取れた安魚と混ぜてミンチにして冷凍して大分に送り返す。食べたかったらそれを食べろ。ちなみに、大分東京間の輸送トラック料金も混ぜるから高くなるよ。」こんな無茶苦茶なことはないですよね。でも実際FITというのはそういうことなのです。

だから、FITで太陽光パネルが全国に行き渡ったけれども、その副作用、吉野家の「早い、安い、うまい」ではなくて「遅い、高い、まずい」が顕在化してしまっているのです。これが、国民に蔓延する「ソーラー疲れ」の元凶です。

しかし、しかしです。太陽光に罪はありません。本来太陽光発電は地産地消に馴染むものです。上手くやれば、国のエネルギー安全保障にも貢献するし、高齢化して人口が減少する地域の活性化に役に立つのです。

中国主導のグローバル経済に行き詰まりが見えている今、課題先進国で足腰がしっかりしている日本こそが、世界の太陽光発電市場を牽引するに足る革新的なビジネスモデルを生み出すのに最も有利な位置にあるのです。

上の図のように、日本国内で太陽光発電は停滞期に入っていますが、いずれレッドオーシャンを抜けて爆発的普及期に入るでしょう。みんなが得をする、「ソーラーチャレンジ」を一緒に進めていきましょう。2018年をぜひそういう年にしたいと思います。

ブログで詳細なことが申し上げられないのが残念です。私と一緒にやっていただける方は是非ご連絡ください。

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