ブラジルで今年クーデターが起きる可能性あり

白石 和幸

引用元:http://www.eldesconcierto.cl/

今年はラテンアメリカの2大国、ブラジルとメキシコを始め、経済規模で4位のコロンビアと大統領選挙が予定されている。先ず、5月にコロンビアの大統領選挙から始まって、7月にメキシコ、そして10月にブラジルと続く。

昨年12月にはチリの大統領選挙で保守派のセバスチアン・ピニェラが大統領職に復権することが決まった。ラテンアメリカの主要国はメキシコとコロンビアを除いて左派系の大統領が政権に就く傾向が往々にしてあった。しかし、一昨年からアルゼンチン、ブラジル、ペルーと保守派の政権が復活している。

今年、予定されている大統領選挙の中で一番多くの不安材料を呈しているのがブラジルである。ルセフ大統領を弾劾裁判にて解任させた後、大統領に就いたミチェル・テメルへの国民からの支持率は僅か3%しかない。経済は少しづつ上向きになっているとはいえ、回復はまだ十分ではない。

そこで、また政権に就いて経済を復活させようと意気込んでいるのが汚職問題で有罪となり、懲役9年6か月の判決が下ったルラ元大統領だ。彼は、その判決を不服として控訴している。そして、それを利用して今年の大統領選挙に立候補する構えなのである。当選すれば不逮捕特権を確保できる。しかも、現在までの予測支持率では彼がトップなのである。彼の後に2位で続くのは元軍人で極右派のボルソナロである。

ルラ元大統領が有罪である証拠は充分に挙がっている。二審で彼が無罪になる可能性はない。その彼が大統領選にあらためて立候補するということ自体に、国民の間でも意見が分かれている。そのような中で、国民の間で次第に要望が挙がっているのが軍部によるクーデター遂行なのである。

軍の内部においても、ルラが刑務所に収監されないのであれば、彼が大統領候補になることは受け入れることは出来ないという考えが主流を占めているという。

2017年のラテンバロメーターによると、ブラジルでは国民の民主政治への支持率は43%と、過半数に満たない。しかも、ブラジルで民主政治に満足している国民は僅かに13%だけだという。例えば、コロンビアでは58%の国民が民主政治を支持し、現在のベネズエラでは78%が民主政治を要望しているという。

「私には、ルラもボルソナロも候補者には見えない。2018年に大統領選挙があるとは思えない。軍人が権力に就くようになるはずだ。現状から見て、それが最善だ」と取材記者に語ったのは元軍人で、つい最近までラジオのコメンテーターとして活躍していたホセ・カルロスだ。同氏は更に、「経済危機になってから、リオ・デ・ジャネイロは他の地域に比べ9倍の失業を生んでいる」とも述べて、彼もそれでラジオの職場を失い、現在Bla Bla Carの運転手に変身して僅かの収入を得ているという。「まだ私の同僚が多く軍隊にいるが、私がこれから言うことを貴方は将来思いだすようになるはずだ。来年(即ち今年)の選挙は中止になるということだ。軍部が政府を掌握することになるからだ」と取材記者に語ったのである。

その一方で、サンパウロ大学のパブロ・オルテリャノ教授は「現状の政治システムに強い不満をもっている国民は少なくはないということだ」と指摘しながらも、「まだその数は過半数を占めるまでにはなってはいない」と述べている。更に、同教授は「最近よく見かけるようになっているのは、軍部の介入を支援するのが頻繁になっているということだ」と述べた。即ち、即座に軍部の介入を要求したプラカードを持って抗議デモをしている人たちが増加しているということなのである。

最近の目立つ例として、リオのマラカナ・サッカースタジアムに巨大なプラカードが出現し、それに「軍部の即座の介入」と記されていたそうだ。フェイスブックでも同様のことを要求する頻度が急増しているという。

軍部でも、それに応えるかのように、昨年10月にハミルトン・モウラーオ将軍が次のように述べている。「非合法に染まった人物を公的社会から引き出して司法権によって政治的問題を解決せねばならなくなるような時が来る。もしそれが実行できなくなると、我々軍人がそれを科すようになる」と述べ、「その介入の可能性がある場合に備えて準備は万端だ」と。

必要とあらば軍部が介入するということを指摘しているのはモウラーオ将軍だけではない。エドソン・レアル・プジョル将軍やアウグスト・エレノ退役将軍らも類似の発言をしている。同様に、大統領選で現在支持率で2位につけているボルソナロもモウラーオ将軍の発言に同意していることを彼のソーシャルネットを通して表明している。

彼らのは発言に対し、ブラジル軍の最高司令官であるエドゥアルド・ビリャス・ボアス将軍は、彼らの発言内容に合意しない旨を表明した。しかし、そのような不要な発言をした事に対して罰金は科さないことも明確にしている。

オルテリャノ教授は軍部によるクーデターの可能性は否定している。軍の内部において軍部の政治への介入を望んでいる者もいることは同教授も認めている。また、国民の間でも同じようにそれを支持しているのは確かであるが、「その数は20%にも満たない」と指摘した。そして、「現在の軍部は権力を掌握するための手段も名声も持ち合わせていない」と断言した。

しかし、1964年から1985年までブラジルは軍事政権であったことも記憶しておく必要がある。当時は、米国もラテンアメリカを支配するために各国の軍事政権を支持していたのも確かである。しかし、現在の米国はそれが出来るまでの体制になっていない。例えば、ベネズエラへの軍事介入も中途半端な形で一度試みただけで、それ以後は制裁などによって経済的に苦境に追い込むようなシステムを選んでいる。