文字の巧拙は試験の合否に影響するか?

マークシート試験では関係ありませんが、論述式の多い中学受験、高校受験、大学受験、はたまた資格試験において、「文字の巧拙」は点数に影響するでしょうか?

私が大学生の時に受講した民法第一部の米倉明教授は期末試験前に、「じっくり構成してから答案を書いてくださいね。じっくり練った後は一気呵成に書く。文字なんて気にしなくていいんです」と言っていました。

当時の問題は教授が手書きで書いたものをコピーしたものでした。

問題文の米倉教授の文字があまりにも下手過ぎて、重要部分を読み落とした学生もいました。

「たしかに、これじゃあ文字のことなんて言えんわな~」と、私たちは呆れたものでした。

その後、とある本に次のようなことが書かれていました(ずいぶん前のことなので書名は不明で内容も若干不完全です)。

米国の大学教授が学生の答案を何人かの研究員に採点させたところ、平均点は50点でした。同じ答案を、文字が上手で有名な教授婦人がそっくりそのまま書き写し、同じように採点させたら平均点が80点に上がりました。

この実験が事実だとしたら、採点にあたった研究員たちは文字の巧拙だけで点数を変えていたことになります。

私自身、司法試験合格後、司法修習生の時にも、司法試験予備校の答案採点のアルバイトをしていました(司法修習生の専業義務違反です…)。

その時の印象としては、書くべきことがきちんと書かれていれば、悪筆でも問題なく高得点を付けました。

しかし、ハズしている不合格答案の場合、丁寧にきちっとした文字で書かれていた答案の方を少し甘めに採点した記憶があります。

丁寧な文字で書かれた答案に対しては、「こんなに一生懸命書いているんだ」という印象を受け、書きなぐったような文字で書かれた答案に対しては、「投げやりでやる気がないのか」という印象を受けたのです。

いずれもハズした内容なので不合格点ですが、合格点25点のうち1点くらい差を付けた記憶があります(かたや23点、かたや22点というふうに)。

文字の巧拙はそう簡単には直りませんし、それに費やす時間があれば内容的に優れた解答を書く努力をした方が圧倒的にコスパは高いです。ちょっとした工夫をするだけに止めましょう。

私の考える、少しの工夫で好印象を与える方法を以下に挙げました。

1 文字が見やすい筆記用具を使う。文字が薄いと採点に疲れた目には厳しいので、濃いめの鉛筆や少し太めのサインペンなどを用いた方がいいでしょう。太すぎて答案が黒く感じると逆効果なので、いくつか使ってみて一番いいのを選びましょう。筆記用具など安いものです。

2 「トメ」までしっかり書く。算数の分数の横線やイコールなど、跳ねるように書かれていると雑な感じがします。文字同様、最後までしっかり書きましょう。

3 句読点をきっちり書く。とりわけ文章の終わりの〇は、〇になっていない答案が多く見られます。Uなのか逆Uなのかと疑ってしまいそうな答案もあります。文章の最後に締りがないと、文章全体がだらしない印象を受けてしまいます。語尾をきちんと発音するのと同じだと心得ましょう。

見やすくて丁寧な文字を書くことは、とりわけ私立受験では意識すべきだと私は考えています。

私立は国公立と違うので、「丁寧な文書が書ける受験生に来てほしい」ということでプラス点を付けても何ら問題ありません。

最も大切なのは内容ですが、形式で合否が分かれることもあります。

ほんのちょっとの工夫で改良することができるので、是非、試してみて下さいね。

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。