試験本番に悪条件は付き物

センター試験が終わり、中学受験や大学受験の試験シーズンが始まりました。

センター試験では、大阪大学の試験監督がいびきをかいて居眠りしたため、「いびきで試験に集中できなかった」というクレームが入ったそうです。

「いびきくらいで集中できないなんて情けない」と思った人もいたかもしれません。

しかし、雑音は気になると、ますます気になってしまうものです。近隣騒音トラブルが頻繁に起こっているのも、このことが原因です。かなり昔、近隣のピアノの音がうるさいということで、刃傷沙汰の事件があったと記憶しています。

娘や孫が練習しているピアノの音であれば心地よく聞こえる音も、「神経を逆なでする音だ」と思ってしまう人にとっては、ほんの少し音が出ただけでも気になって仕方がなくなるものなのです。

私が高校生のころ、生物の先生が試験監督に来ると、スリッパをバタバタ鳴らして教室中を歩き回っていました。

ある日、クラスの誰かが「あの音が気になって集中できなかった」と漏らしました。すると不思議なもので、それまで気にならなかった私も気になるようになりました。

これは他のクラスメートにも伝染し、「近くに来たら足を引っかけてやる!」と不穏なことを企む男子生徒まで現れる始末でした。

このように、「雑音は一度気になりだすと気になるもの」なのです。

対策としては、大きな雑音のあるところで問題を解く練習を何度かやっておくことでしょう。

私は、司法試験の択一試験前になると、公立図書館の児童書コーナーの近くで択一問題を解く訓練をしました(幸い、当時は館内での自習が許されていました)。

児童書コーナーにいる子供たちは本当に騒々しいし、意味のある言葉を発しているので単調な雑音の比ではありません。

最初はとても気になりましたが、4回目か5回目くらいになると、気になりつつも通常のペースで問題を解くことができるようになりました。

なぜこのような対策を取ったかというと、事前に某合格者から「択一試験当日、近くの高校のブラスバンド部の練習が聞こえてきて苦労した」という話を聞いていたからです。

3時間で60問という集中力とスピードが必要な試験なので、最悪の事態を予想して「慣れ」をつくっておいたのです。

論文試験は、各科目2時間で2通の論文答案を作成するので、択一試験のように集中力とスピードは必要ありません。

完全に油断して安心しきっていた私は、論文試験の最中にひどい目に遭いました。試験会場が早稲田大学だったのですが、一般学生の中間試験と重なっていたのです。

建物も一般学生と同じで、試験中に廊下や階段を一般学生が通っていき、窓外では大騒ぎをする学生もいました。日本最難関の国家試験のヤマ場とは到底思われない雰囲気でした。

事前準備をしていなかった私は、民法で重要論点をいくつか落とすという失敗をしてしまいました。

暑さに弱い私にとって、7月中下旬のエアコンなしの教室という悪環境も災いしたのでしょう。

科目終了後の休憩前に、試験官が「同じ建物で一般学生が試験を受けています。雑音で迷惑だというクレームが来ているので休憩時間は静かにして下さい」と注意した時、その部屋にいた受験生のほとんどが低い不満の溜息を漏らしました。

表立ってクレーム付けて試験官と喧嘩してしまうと受験に影響するかもしれないので、実にささやかな抵抗でした。つくづく、司法試験受験生は人間扱いされていないな~と痛感した瞬間でした。

それでも、次の科目、その次の科目になると「慣れ」が出てきたので、苦しいながらも何とかこなせるようになりました。

気にしても仕方のないものは、慣れるしかありません。

このように、本試験では何が起こるかわかりません。世の中は受験生のために回っている訳では決してないのです。会場近くで土木工事が行わるかもしれません。

「一度気になりだしたものを気にならなくする方法」を、残念ながら私は知りません。

最初から「何でもありで、無事に何もなければ儲けもの」という気持ちで臨めばいいのではないでしょうか?

気になっているのは、絶対にあなただけじゃないのです。

気になったら、そのまま気になりながら最後まで粘り続けて下さいね。

荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。