アマゾン本社誘致合戦に見る、米国と日本の大きな違い

山本 ひろこ

Robert Scoble/flickr(編集部)

目黒区議会議員の山本ひろこです。

アマゾンの第2本社候補地が20都市・地域に絞られました。なんせ50億ドルを投資して、雇用5万人の創出。プラスαも考えると、いったい町にどれくらいの利益がもたらされるのか。日本でも、規模は違えども地方では自治体による企業誘致合戦があります。同じように見えますが、そこには大きな違いがあります。

米国ではバランスバジェット法というものが全州に行き渡り、各自治体で収支の均衡が求められています。つまり、歳入の範囲内でしか歳出の予算を組めないというルールです。ゆえに、歳入確保は自治体経営の大前提で、歳入が増えなければ予算を増やせません。

アマゾンのような莫大な雇用と利益をもたらす企業が自分の自治体に来るならば、大きな予算が組めるようになるわけで、だからこそ、必死で誘致合戦するのです。雇用増、住民増、収入増、消費も増、という民間主導の経済活性化により、自治体の収入が増えれば、減税することもできます。好条件な税制となれば、制度メリットに惹かれて外から人や企業が集まってくるので、更に地域経済が活性化する。まさにプラスのスパイラルです。

これに対し、日本では国も自治体も赤字ありきで成り立っています。地方交付税の不交付団体は、都道府県では東京都だけ。1741ある市区町村で76団体だけです。96%の自治体は国から税金を補填してもらって収支を均衡させています。つまり、元々税収補填ありきの予算構成のため、収支の均衡など考えてもいないので、企業誘致の目的も地域の活性化や、人口減少の食い止めのためという方向に向いています。

つまり、米国の自治体では歳入は予算直結の死活問題なのに対し、日本では予算に直結しないので、自治体にコスト感覚がないのです。しかし、この赤字依存体質を止めなければ、少子高齢化で税収増も見込めない中、この先は増税の一途を辿るだけです。家庭でも収支の均衡なんて当たり前にも関わらず、国や自治体が毎年歳入以上の予算を組んでいるなんておかしな話です。

一昔前と異なり、インターネット網が世界中に張り巡らされた現代では、企業も人も自由に拠点が選べます。魅力的な町に人が増え、そうでない町は衰退していくのは、自然の原理です。財源が限られる中、日本のように借金で税金を投入して全国一律のサービスを提供し続ける関係が、持続可能なわけがありません。民間が稼げるような町にならなければ、自治体がいくら補助金を出しても町は経済活性化しないのです。

儲ける民間企業が拠点となる自治体を選んであげるという、従来の「官民連携」とは逆の関係ですが、これからは民間主導のまちづくりが主流になると考えます。

山本ひろこ 目黒区議会議員(日本維新の会)
1976年生まれ、埼玉大学卒業後、外資系企業でITエンジニアとして勤務しながら、3児をもうけるも、保育園入所率ワースト1の目黒区にて保活に苦戦し、行政のありかたに疑問を抱く。その後の勉強会で小さな政府理論に目覚め、政治の世界へ。2015年、目黒区議選に初当選。夫の病気を機に健康管理士取得。現在は東洋大大学院公民連携学研究生。