国際政治学の観点からどんな分析やどんな提言をされてもいいが、自衛隊はどこから見ても「軍隊」だ、などと断言されない方がいい。
戦争放棄と戦力不保持を国是とする現在の憲法の下でも「軍隊」の存在が認められる、という理屈は、憲法の明文の規定を読む限りどこからも出てこない。
国際政治学というのは、簡単に法の文理解釈を乗り越えてしまう学問なのか、と驚いてしまう。
自衛隊は国際法上は「軍隊」だ、自衛隊は国際的には「軍隊」として扱われている、などと仰っても、自衛隊が諸外国の軍隊と同じようなことをしているか、と言えば、そんなことはない。
自衛隊を諸外国の軍隊並みの活動が出来る組織になんとか格上げしたい、という要請が自衛隊関係者の間から上がってくるが、日本の国民はそれを許さないだろうし、中国、韓国、ロシア等日本の周辺の国々がそれを黙って容認するとは思えない。
まあ、アメリカの中には日本に本格的な軍隊が生まれ、これまでアメリカが事実上担っていた国際秩序維持のための軍事行動の一部の肩代わりを期待する向きがあるかも知れないが、アメリカの思惑とは異なった方向で日本の軍事力が強化されて行くことには反対するはずだ。
日本の国民が期待する自衛隊の役割は、あくまで日本の国民の安全確保や国土の保全のための活動であって、自衛隊はその名称に端的に表れているように、あくまで「自衛」のための組織であって、国際平和維持活動の場合を除いて、自衛の限度を超える活動までは基本的に求められていない。
学者が何と言っても自衛隊は軍隊だ、などと篠田氏は仰るが、篠田氏が何と言っても自衛隊は自衛隊であって、軍隊ではない。
まあ、篠田氏は憲法学者の議論が観念的過ぎるということから、あえて世論を惹起するために自衛隊は学者が何と言っても軍隊だ(もっとも、「学者が何と言っても」という文言は、ブロゴスの編集者の方で付けられた付加文言。念のため。)、などという一見乱暴な議論を展開されれうのだろうが、この種の議論は目下の憲法改正論議にとって何のプラスにもならないだろうと思うから、あえて異論を申し上げておく。
篠田氏は、もう少し違った切り口から問題提起をされては如何か。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。