『島耕作の事件簿』が期待以上だった件

常見 陽平

私は島耕作が大好きな人材である。全部、持っている。ただ、最近は「安売りしていないか」と思えるような、雑な外伝的作品や、コラボ企画も乱発されており、ファンとして胸を痛めていた。だいぶ回復し面白くなってきたものの、何より「本編」の会長編、ヤング編である「学生・就活編」のテコ入れこそ必要なのではないかと思っていた。

島耕作がコラボ作品、スピンオフ作品として刑事編をやると聞いて、嫌な予感がしていた。これはダメコラボなのではないかと。


しかし、リリースされた『島耕作の事件簿』はそんな嫌な予感を吹き飛ばすほどの佳作だった。原作は樹林伸が担当。説明不要な重鎮だ。そう、『金田一少年の事件簿』や『神の雫』など、数々の名作、ヒット作の原作を担当しているあの樹林伸氏である。あとがきによると、『島耕作』シリーズの弘兼憲史氏とはワイン仲間だそうだ。

これは良コラボだ。舞台を課長時代のバブル期1990年に設定。島耕作の黄金期の一つと言っていいだろう。ネタバレするので、詳細は書かないが、再び注目を浴びつつあるバブル期を舞台に、ビジネス色あり、サスペンス色あり、少しだけエロありと、エンタメ性抜群の作品になっている。

いままでの島耕作コラボには、大安売り感があったのだが、この作品は島耕作のキャラが活きている。弘兼憲史氏も作画に専念しているわけだが、これはこれで島耕作に輝きを取り戻すためのナイスな施策である。一気読みの圧倒的な面白さだった。

島耕作✕推理モノというのは、奇策のようで、大ヒットだった。これまでのコラボ、本編のテコ入れという模索の繰り返しの末の大ホームランとも言えるだろう。この1✕1が無限大になるのが、良コラボである。

今年は島耕作35周年イヤーだ。今後も驚くような企画が多数リリースされることだろう。期待しよう。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。