「かぼちゃの馬車」はなぜ暴走してしまったのか?

「かぼちゃの馬車」と聞いても何のことかわからない方も多いと思いますが、都内で展開する女性専用のシェアハウスのブランド名です。

この新築の女性向けシェアハウスを頭金なしのフルローンで買える不動産投資商品としてパッケージ化。大手企業の会社員、弁護士や医師のような属性の高い投資家に、数億円単位の物件で販売していたスマートデイズが、投資家に対するサブリースの家賃支払いを停止したと不動産情報サイトの楽待が報じています(写真も同サイトから)。

4年弱という短期間に800棟の女性専用シェアハウスを投資家に販売。これによって同社は急成長を遂げましたが、物件の立地の選択や、管理運営体制は万全とは言えない「暴走」になってしまったようです。このまま家賃の支払い停止が継続すれば、不動産担保ローンの返済ができない投資家が続出し、大きな社会問題になる可能性が高くなってきました。

楽待の取材記事によれば、2017年10月末時点での入居率は40%程度とされており、全体で60%が空室という状態です。物件販売の利益を賃料の補填に回していたとすれば、スキームが行き詰まるのは時間の問題と言えます。

そもそも不動産投資と言うのは、ニーズのあるところに適正な賃料の物件を作らなければ、事業として成り立ちません。まずは立地こそが不動産の価値を決める最大の要素なのです。

東京のシェアハウスであれば、賃借人が求めるのは、狭くても良いのでリーズナブルで利便性の高い快適な区間です。また、同じシェアハウスに住んでいる人たちとのコミニケーションを大切にする人も多いと思います。東京でそのようなニーズがあるのは、都心部のごく一部だけだと思います。23区でも少し郊外になってくれば、そのニーズは激減します。

また、サブリース契約が全て悪いとは言いませんが、もともと実現できない賃料水準を保証するサブリース契約は、経済合理的に成り立つはずがありません。リスクを肩代わりする代わりに、利回りが少し低くても安定した収入を得たいという場合にメリットがあるのがサブリースの本来の姿です。

ニーズの低い割高な物件を供給した不動産会社や、それに対してずさんな審査で融資を行った地方銀行にも責任はあります。データの改ざんなどがあれば、その責任は問われるべきです。しかし、最終的な責任は、投資対象について自分で充分な調査をせず、安易に投資を行った投資家自身にあります。

同じ都心の不動産でも、空室リスクの低い物件は供給されています。例えば、都心・中古・ワンルームであれば、私が依頼している管理会社の空室率は全体で1%以下と、極めて低くなっています。実際、私が保有している都心のワンルームは、全て満室です。

不動産は立地が命です。空室リスクが低いエリアに、妥当な価格の物件を分散して保有すること。これが最もリスクを抑えた不動産投資の王道です。最初は中古の区分ワンルームから。そして経験を積んでから、一棟ものでより大きなリスクにチャレンジすべきです。

少なくとも不動産投資経験の無い素人が納得するまで調べもぜずに、いきなり億円単位の物件を購入するのは無謀としか言いようがありません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年1月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。