訪米外国人旅行者の減少トレンドの余波? NYホテル料金に異変

安田 佐和子

2月半ばに、米国出張へ参ります。

ホテル料金をチェックしたところ、ボー然としました。ワシントンD.C.とニューヨークのホテル料金が逆転していたためです。NYでまともなホテルに宿泊しようものなら1泊200ドルは常識でしたが、2月半ばの冬真っ盛りという事情もあって100ドル近辺でミッドタウンのホテルを発見できたのですよ。逆にワシントンD.C.でちょっと小奇麗なホテルを選ぼうものなら、180ドルオーバーでしたが・・。この違いは民泊の影響と共に、観光客の規模にあるのかもしれません。

トランプ大統領の誕生以前にあたる2015年から、ドル高を背景に米国を訪問する外国人旅行者は減少トレンドをたどっています。国連世界観光機関(UNWTO)によれば、外国人旅行者の減少が著しいのは米国とトルコ程度だとか。BREXIT問題を抱える英国を含め、 前年比で2桁増を達成する各国と対照的です。米国はこれまで、人気の旅行先としてフランスに次いで2位の座を維持してきましたが、UNWTOの見立てではスペインにその地位を奪われかねません。

UNWTOの慎重な見方と整合的で、米商務省によると2017年7月までの訪米外国人観光客は、年初来で前年比4%減の4,100万人でした。9地域全て減少しており、特に著しいのは中東で同32.2%減続いてアフリカが同28.2%減となっています。トランプ氏が大統領令でイスラム圏諸国を対象に入国制限に踏み切った影響が。そのほかの地域でも2桁減が並び、9地域中で1桁減にとどまったのは3地域のみ。オセアニアが2.1%減、西欧が1.9%減、アジアが1.8%減でした。

国別では、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国で明暗が分かれています。訪米外国人旅行者数1位のカナダは4.6%増の1,159万人だった半面、国境の壁建設が問題視される2位のメキシコは8.5%減の956万人でした。3位の英国はトランプ大統領が2月の訪英を断念したように6.2%減の236万人、逆にトランプ訪日に沸いた4位の日本は、0.4%増の199 万人とわずかながら増加。気になる中国(香港を除く)は5.8%減の161万人と、貿易赤字が過去最高に膨らむ一方で訪米旅行者数は落ち込んでいます。

訪米外国人旅行者数、国別と地域別動向(年初来は2017年7月まで)


(作成:My Big Apple NY)

外国人旅行者の支出額(教育を除く)も、振るいません。2017年10月までで前年比3.2%減の1,241億ドルと、2016年と合わせ2年連続で減少する可能性が濃厚。米国旅行協会の試算では、2017年の旅行者減少幅が米経済に46億ドルの損失を与え、且つ4万人の雇用減少に相当するといいます。

ベージュブックでも、NY連銀の報告からは訪米外国人旅行者数の減少している様子が伺えます。2017年11月公表分では、当初予想ほどではなかったとはいえ「海外からの観光客が減少した」と明記していました。2018年1月公表のベージュブックでは、ミネアポリス連銀も「冬季の観光シーズンはまちまちなスタートを切った」と記述していました。

今後、訪米外国人旅行者数の減少に歯止めが掛かるかは、トランプ政権の政策と共にドルの水準に掛かっています。為替と言えば、ムニューシン財務長官はダボス会議で「ドル安は良いこと」と発言しましたよね。他ならぬトランプ大統領が火消しに動いたとはいえ、政権は足元のドル安を心地よいと感じているのでしょう。

(カバー写真:Diego Torres Silvestre/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年1月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。