知財本部2018ラウンド開始

知財本部 検証評価企画委員会が開かれ、知財計画2018に向けたラウンドが始まりました。
コンテンツと産業財産権について、短期・長期の戦略を練ります。
引き続き座長を務めます。

コンテンツ分野は動画協会石川理事長、青学内山教授、吉本興業大崎社長、セガ岡村社長、カドカワ川上社長、NHK木田専務、東大喜連川教授、松竹迫本社長、ニッポン放送重村会長、複製権センター瀬尾代表、竹宮恵子先生、講談社野間社長、福井健策弁護士、ホリプロ堀社長、NTV宮島さん。
重いっす。

冒頭ぼくのあいさつ。
「リオ五輪の閉会式で総理がマリオに扮して登場したのは、2020年に向け日本はコンテンツとテクノロジーの融合と発信を重視するという姿勢の現れ。
これまでの施策を厳しく検証すべき事項もある一方、アニメや音楽の海外展開は成果が現れている。プラスの評価もすべき。
一方、ここ10年スマート化の対応をしてきたコンテンツ分野にも、AIやIoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなど一連の技術革新が大波となって押し寄せる。
産業財産権分野とも一体となり、そしてIT戦略や科学技術政策とも連携して、新しいビジョンを作る時期が来たことでもある。」

知財計画の進捗について政府から説明。
・データ利活用促進のための知財制度の構築:
データ利用権の契約ガイドライン、PDS・情報銀行などの実証実験、AIの作成・利活用促進のガイドライン 等

・第4次産業革命の基盤となる著作権システムの構築:
柔軟性のある権利制限規定、拡大集中許諾制度の研究、ICT活用教育のための著作権制度改正、知財教育・人材育成:学校での知財教育の推進 等

・コンテンツ海外展開促進と産業基盤の強化:
クールジャパン機構活用、TV番組支援、アニメ制作下請ガイドライン、新技術によるコンテンツ表現開発の促進:AR・VR・ドローン・AI、模倣品・海賊版対策 等

・映画産業基盤の強化:
国際共同制作支援、ロケーション支援の強化 等、デジタルアーカイブの構築:アーカイブ間連携と利活用の促進 等

知財計画2017施策の予算要求は593億円。
新規事項は放送コンテンツ海外展開強化事業(総務省)、文化財活用センター機能整備(文科省)など。

これを踏まえ、住田知財事務局長から、IoT、ビッグデータ、AI、ブロックチェーンなどの技術進展を背景として「新・知財戦略ビジョン」を作ることが提案され、了承されました。前回2013年のビジョンはスマート化に対応するためのもの。あれから5年。必要です。

ここからは委員の意見交換。
瀬尾委員:PDCAを回す短期策と長期ビジョンの双方が必要。
相澤委員:成長戦略の中に知財戦略を位置づけろ。
喜連川委員:知財本部で議論したことが他省でも議論されるようになっている。われわれはこうしたプロアクティブな姿勢を続けよう。
迫本委員:AIとの連携でコンテンツも予測できない事態が発生する。民間のアイディアやチャレンジ、山っ気を活かす施策を。計画は立派なので、それを継続したい。
林委員:エビデンスベースの政策が重要。データ利活用最優先の原則を貫きたい。
・・これら意見はみなすんなり受け止められます。

一方、今回は教育に関する議論が活発でした。
福井委員:個人の知財力が重要だが大学での取り組みは薄い。
佐田委員:知財計画は知財教育のバイブル。ビデオ化など分かりやすく伝える工夫が欲しい。
宮島委員:小中高での知財教育は難しい。プログラミング教育と同様、外部教員を活用したい。
江村委員:データ利用やルール作成のリテラシーを上げるべき。
石川委員:アニメの海外展開はまだこれからで、現場の知財教育が基礎となる。
・・小中高、大学、企業現場、全てにおいて知財教育の拡充が求められています。

他にも重要な指摘がありました。
重村委員:日テレの12話ドラマをトルコが32話にリメイクしたら80か国に売れた、という話をトルコの関係者から聞いた。コンテンツ海外展開は順調だが情報がバラバラ。集約・共有が必要。
・・そんなことがあるんですね。

瀬尾委員:著作権法改正を急げ。法案としては世界的にアドバンテージのある内容だが、成立しないとそのアドバンテージが薄れる。ナショナル・デジタルアーカイブはAIのインフラだ。これも急げ。
・・急ぐべき案件、多いです。

内山委員:VRやプロジェクションマッピングなど「フレームのない映像」が注目される。10年後もスマホが主力であるとは限らない。「ポスト・スマホ」をテーマにすべき。

・・賛成。スマホに代表されるスマート時代の次を展望して戦略を立てましょう。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。