人はなぜ睡眠をとるのだろうか。実は科学的にもはっきりとした理由はわからないため、明確な定義が存在しない。間違いなくいえることは、疲れをとるためには質の高い睡眠が不可欠だということだろう。私たちは、不眠大国ニッポンに生きているが、睡眠に悩む人が年々増加傾向にあることをご存じだろうか。
今回は、『自分で治せる! 腰痛を治す教科書』を紹介したい。版元は出版道場でもお世話になっているソーテック社。著者は、整骨院を経営する、鈴木勇さん。生活習慣を変えて、腰痛改善のストレッチや、筋肉強化をすることで腰痛が改善することを解説している。そのなかでも「枕選び」の項目が興味深かったので、皆さまにお伝えしたい。
間違った枕選びに注意
アメリカのミシガン大学が2006年に発表したレポートによれば、100ヵ国の平均睡眠時間を調査したところ、日本とシンガポールが7時間24分でもっとも短いということが判明している。日本が世界最高峰の不眠大国であることはほぼ間違いない。睡眠の質をアップさせるには「適切な枕」の存在が必要になる。
「まずは、『良質な睡眠をとるための睡眠環境を整える』ことを考えていきましょう。特に、睡眠は1日のうちで、少なくない時間をすごす行為なので、悪い姿勢で睡眠を続けることは、骨のズレを起こす原因にもつながります。良質な睡眠をとる環境を整えるうえで特に重要なことは何でしょう。それは『いい枕選び』です。」(鈴木さん)
「ポイントは材質ではありません。『高さ』が重要です。よく首のカーブを強調しているものがありますが、これから紹介する『バスタオルを枕にする方法で十分』です。上を向いて寝る人は、後頭部の1番出ているところにバスタオル枕をひとつ使います。横向きに寝る人は 枕をした状態で頭から腰までがまっすぐになるような高さに調整します。」(同)
このときに、バスタオル枕を2つ重ねることがポイントになる。また、鈴木さんは、リラックスして寝ることの重要性を次のように解説している。
「いろいろ思いを巡らせていると、なかなか眠れなくなってしまいます。そのときは1度起きて、考えなくてよくなったタイミングで再度横になるようにしましょう。良質の睡眠は、日々の疲れを取り、健康を保つために欠かせません。まずは、すぐにでも実践できる寝具などの睡眠環境の見直しからはじめてみましょう。」(鈴木さん)
「また、首や腰にやさしい枕は、何も高いお金を払って買う必要はありません。『家にあるバスタオル1枚でつくることができます』。しかも、バスタオルで寝ることができると、旅先どこに行ってもバスタオルで自分にぴったりの枕をつくることができるので便利です。簡単ですからぜひ試してみてください。」(同)
睡眠不足には弊害が多い
味の素が実施した『全国睡眠意識調査(2015年)』によれば、日本人の7割以上の人が睡眠に何らかの不満を持っている結果が明らかになっている。仕事でパフォーマンスを発揮したいのであれば、睡眠不足を自慢している場合ではない。欧米では、睡眠は自己管理の一貫と考えている。睡眠を自分で管理していくことが大切である。
睡眠不足は様々な弊害をもたらす。眠りが浅いと、心や思考に悪影響を及ぼしやる気が低下する。当然ながらパフォーマンスにも影響がある。気合いや根性で睡眠不足は改善しない。さて、本書の主題が「腰痛」であることから、腰痛に関する情報も紹介しておきたい。厚労省の調査ではわが国の腰痛の患者数は約2800万人とされている。
これほどポピュラーな疾患であるにもかかわらず、多くが「原因不明」とされている。睡眠と同じく原因が明確化されていない。さらなる研究が必要な分野ともいえよう。本書には生活習慣の改善方法、腰痛の改善方法が多数紹介されているが、今回は、睡眠不足を引き起こす「枕選び」の情報を紹介した。
さて、筆者も、新刊を上梓したので関心のある方は手にとってもらいたい。読む際には、枕選びにも留意のほど。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト