【映画評】ダークタワー

巨大な暗黒の塔(ダークタワー)、魔術を操る黒衣の男、拳銃使いの戦士らが現れる悪夢に毎日うなされる少年ジェイクは、その夢を周囲の大人に訴えるが信じてもらえない。ある日、夢に出てくる中間世界と呼ばれる異界の入り口が、時空を超えて現実世界につながっている場所を発見する。中間世界へと導かれたジェイクは、世界のバランスを維持するタワーの守護者であるガンスリンガーのローランドと、タワーを破壊しようとする黒衣の男ウォルターの死闘に巻き込まれていく…。

孤独な少年が迷い込んだ異世界で世界のバランスを維持するタワーを巡る争いに巻き込まれるダーク・ファンタジー「ダークタワー」。原作はスティーブン・キングがライフワークだと語る全7冊にも及ぶ大長編小説だ。もっとも映画は、原作を大胆に翻案していて、最後の戦士ガンスリンガーがダークタワーを目指す長い長い物語は、不思議な能力を持つ孤独な少年のストーリーに変わっている。少年の成長物語というほどの変化はないし、わずか95分の上映時間から分かる通り、物語は駆け足で通り過ぎて、ゆっくり余韻にひたる時間もなく、壮大な世界観も伝わらない。原作ファンは相当ご立腹のようだ。まぁ、キング原作の映画化は原作ファンが満足することなどほとんどないそうなので、ある意味、問題なしとも言える。

それはさておき、手軽でスタイリッシュなガンアクション・ムービーを見ると割り切れば、そこそこ楽しめる作品だ。日常から異世界へ迷い込み、世界の危機を救う。手垢のついたストーリーだが、「マトリックス」を例に出すまでもなく、多次元世界ものはやはり興味深い。タワーを守る使命を背負ったガンスリンガー役のイドリス・エルバの、切れ味鋭いアクションとカリスマ性、威厳に満ちた存在感が最大の魅力だ。
【50点】
(原題「THE DARK TOWER」)
(アメリカ/ニコライ・アーセル監督/イドリス・エルバ、マシュー・マコノヒー、トム・テイラー、他)
(深み度:★☆☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年2月19日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。