プロ野球、千葉ロッテマリーンズは23日、臨時株主総会と取締役会を開き、韓国で収監中の重光昭夫氏の代表取締役オーナー代行の辞任を決定。後任にロッテホールディングス(HD)取締役、ロッテ副社長の河合克美氏が就任したことを明らかにした。
重光氏の父で、ロッテ創業者の武雄氏はオーナーとして留任しているが、韓国で昨年末に実刑判決(高齢のため収監は見送り)を受け、不在状態が続いている。昭夫氏も取締役として残ってはいるものの、ロッテHDの代表権を外れたのに続き、球団トップの座を降りたことで、1971年の球団保有以来初めて創業家が、球団経営の舵取り役から実質的に離れることになった。
日本の球団の現職オーナーが海外とはいえ、逮捕収監されるのは初めてのケースを受け、球団側の対応が注目されていた。ただ、先日のVlogでも述べたように、プロ野球の「憲法」にあたる野球協約では、オーナーの逮捕や収監は想定しておらず、経営側の性善説に基づいていたともいえる制度の不備が浮き彫りになっていた。
2000年代半ばには西武球団の堤義明オーナー(当時)が、利益供与問題発覚後、立件前に辞任。今年に入ってからは、重光氏の収監に続き、日本ハム球団オーナーの末沢寿一氏(日本ハム本社社長)も、同僚役員のセクハラの現場にいた責任をとって本社社長を辞職、3月までに球団オーナーも退任する見通しだ。重光氏、末沢氏の退任後も、オーナーが社会的不祥事や刑事事件に関与した場合のペナルティを設けるかなど、NPBが制度面の見直しに乗り出すのか注目される。
“オーナー代行の代行”は博報堂OB。果たして手腕は?
一方、新たにロッテ球団のオーナー代行に就任した河合氏は、HD傘下で菓子事業を行う主要子会社、ロッテでCMO(マーケティング最高責任者)を務めてきた。河合氏を知る複数の関係者によると、博報堂OB。近年は「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」のヒット商品を生み出し(参照:NEWSポストセブン)、2年前には日経トレンディ主催の年間ヒット商品の表彰式に登壇していた(当該記事)。
現在、球団の現場トップの社長は、みずほ銀行出身の山室晋也氏が務めているが、組織ヒエラルキーとしては、広告マーケティングのプロである河合氏が山室氏以下の球団役職員を統括することになる。過去5年の主催試合の観客動員数は、126万→122万→132万→152万→145万と推移しているものの、レギュラーシーズン1位は1974年以来遠のいたままだ。そうした中で、マーケティング広報戦略に変化が生まれるのか。重光氏の今シーズン中の代行職復帰は困難とみられる中、“オーナー代行の代行”は乳酸菌ショコラのような新しい味を出せるのか、スポーツビジネスの観点からも千葉ロッテに注目が集まりそうだ。