「出資して欲しい」と頼まれたら?

「新会社に出資してほしい」と頼まれた経験のある人は少なくなだろう。
もちろん、既に存在する会社への出資を依頼されるケースも多いのではなかろうか?

私自身、仕事関係で知り合った人々から何度かこのようなオファーを受けたことがある。しかし、すべてのオファーを丁重にお断りしてきた。

いくらかでも出資をして会社の株主になるというのは、なんとなく気分がいい。さらに、出資した会社が上場して大ブレイクすれば一躍億万長者になれるかもしれない。そのような甘い期待を抱いて出資をすると、多くの場合失望で終わるのが現実だ。

法律的な見地からすると、非公開会社の株式には「譲渡制限」が付いているで当貸金の回収が極めて困難というのが現実だ。

定款に「株式を譲渡するには取締役会の承諾が必要」と明記されているので、公開株式のように市場等で簡単に換金して”損切り”することすらできない。

幸いにして買ってくれる人が見つかっても、取締役会の承諾が得られなければ、会社側が指定する人に貸借対照表上の純資産額割合くらいで売却する以外に資金回収の方法は存在しない。

早い話、出資した会社が上場するまでは株式は事実上塩漬けで、上場することなく事業が頓挫すれば資金回収はほぼ不可能という極めてハイリスクな行為が、閉鎖会社への出資だ。

ところが、出資者がいなければ会社を起こすことは出来ない。
当初の設備資金や当面の運転資金がなければ、いわゆる「起業」そのものができないということになる。

そこで、資金の出し手としての役割を担うのが「ベンチャーキャピタル」と言われるような組織で、かのグーグルがベンチャーキャピタルから出資を受けた時には、グーグルは銀行口座すら持っていなかったそうだ。

米国のベンチャーキャピタルは、将来性を見込んで銀行口座すら持っていない会社にも出資するが、わが国のベンチャーキャピタルは審査がかなり厳しいと聞いている。

そこで、私が有望だと思うのが「出資型クラウド・ファンディング」だ。
1口当たり小額の資金を多数の一般大衆から集めることができるので、出資者としてもポートフォリオを組むことができる。

仮に、スタートアップ企業がブレイクする確率が数パーセントだとしても、100社に1,000円ずつ出資しておけばかなりの確率でハイリターンを得ることができる。

現在、わが国でも投資型クラウド・ファンディングのサイトがいくつか存在するが、法整備や統一ルールが制定されるまでには至っていない。われわれ一般人が、気軽に少額投資をするような環境には至っていない。

政府が本腰を入れて、法整備や統一ルール、事業者の要件等の策定を積極的に推進していけば、「起業」のハードルがグンと下がるだろう。

もっとも、利用者保護のために悪徳業者の排除や様々な規制も必要となるので、「使い勝手の良さ」と「利用者保護」を上手く調整する必要があり、それが最大の課題だ。

荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。