今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後、中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道について、誤った情報に基づいている可能性があるとの見解を示した。
中国の米国債保有に何かしら動きがあったのか。米財務省が2月15日に公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)を確認してみたい。
これによると、昨年12月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国となっている。昨年12月時点の中国の米国債保有額は1兆1849億ドルとなり、11月比では83億ドル増加していた。年末ということで前年比と比較すると1265億ドルの増加となっていた。
これに対して今回も2位となっていた日本は昨年12月の米国債保有額は1兆615億ドルとなり、前月比では226億ドルの減少となっていた。前年比では293億ドルの減少となる。
単位、10億ドル、()内は前年比増減
中国(China, Mainland)1084.9、+126.5
日本(Japan)1061.5、-29.3
アイルランド(Ireland)326.5、+38.3
ケイマン諸島(Cayman Islands )269.9、+6.2
ブラジル(Brazil)256.8、-2.4
英国(United Kingdom)250.0、+32.8
スイス(Switzerland)249.6、+19.6
ルクセンブルグ(Luxembourg )217.6、-6.7
香港(Hong Kong)194.7、+3.3
台湾(Taiwan)180.9、-8.4
この数字を見る限り、中国が政策的に米国債保有額を減少させているとは言えない。2月7日に中国人民銀行が発表した今年1月末の外貨準備高は216億ドル増の3兆1600億ドルとなった。中国の外貨準備は12か月連続で増加しており、その結果、米国債の保有高が増加しているともいえそうである。
昨年5月までは米国債保有高のトップは日本となっていたが、昨年6月に中国に逆転されて、その差が広がっている。米国債相場は今年の1月以降は下落トレンド(米長期金利は上昇)となっており、日本などはさらに保有額を減少させてきた可能性がある。
米国の2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限は合計3千億ドル程度引き上げられた。これにより米国の債券市場では米国の財政への懸念に加え、FRBの米国債保有額の減少も加わっての需給への懸念も出てきている。
今後の中国や日本の米国債投資のスタンスが米長期金利の動向に影響を与える可能性もある。今のところ米長期金利が3%を大きく超えてくることは考えづらいが、サブシナリオのひとつとして考えておく必要があるのかもしれない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。