米中貿易戦争が意識されて、株式市場が動揺

Gage Skidmore/flickr:編集部

米商務省は1月11日に米通商拡大法232条に基づき中国などからの鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に与える影響をまとめた調査報告書をトランプ大統領に提出していた。トランプ大統領は90日以内に輸入制限発動などの制裁措置を判断するとしていた(毎日新聞の記事より引用)。

そして3月1日にトランプ大統領は、中国の過剰生産によって安く輸入されている鉄鋼製品が米国の安全保障の脅威になっているとして、25%の高い関税を課す異例の輸入制限措置の発動を来週にも正式に決める意向を明らかにした。アルミニウムにも10%の関税を課すとしている。対象国は明らかにされていないものの、中国だけでなく欧州や日本、韓国、ベトナムなども対象になる可能性がある。

これは通商拡大法232条に基づくものとなるが、これまで米国の歴代の政権は自由な貿易を損ないかねないとして発動には慎重な対応をとってきており、実際に発動されたのは、法律ができて50年余りで1980年前後に政治的に鋭く対立したリビアとイランからの原油だけとなっている(NHKニュースより引用)。

3月1日の米国株式市場では、この日に実施されたパウエルFRBの米上院での証言で、米景気が過熱する見通しは否定して、緩やかな利上げを進めると強調したことで、タカ派的な色彩がやや薄れたとの認識から米長期金利は低下し、米株は買われていた。しかし、トランプ大統領の発言により、米中の貿易戦争への懸念を強め、結局、ダウ平均は420ドル安となった(日経新聞の記事より一部引用)

2月に入ってからの米国株式市場は調整局面となり、5日のダウ平均は1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。米国株式市場はここまで調整らしい調整はなく、じりじりと上昇しながら高値を更新してきたが、その反動が出たとみられる。ただし、相場はいったん動きだすと荒れた展開が続くことが多い。ボラティリティが低い状態が長らく続いていたこともあって、その反動も起きたといえる。ここにきて少し落ち着きも見えてきたかと思われたところにトランプ大統領によって、火に油が注がれた状態となってきた。

今回の米株の下落は一時的な調整とみてはいるが、ここであらためてトランプ政権に対するリスクが意識されると、トレンドそのものが変化してくる可能性もあるため、今後のトランプ政権の動向とそれを見据えた米株やドルの動向、さらには米長期金利の動向には細心の注意も必要となってきそうである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。