フジテレビが5日今春の改編を発表したが、上層部や編成は視聴率が変化していくことを知らないのかと耳を疑う内容だった。
改編率は全日帯28.2%、ゴールデン帯(午後7時から同10時)29.8%、プライム帯(午後7時から同11時)29.5%の大幅改編だ。改編率自体は高いが、例えば低視聴率番組から「とんねるずのみなさんのおかげでした」や「めちゃイケ」「おじゃMAP」など長年フジテレビを支え続けた番組まで打ち切った。
しかし、後番組を務めるのは坂上忍、林修、東野幸治、恵俊彰、梅沢富美男と50代以上の男性MCで他局でみたことがあるような情報番組やトーク番組が中心。視聴率の早期回復には、このような手段をとらざるおえない現場の苦渋の決断も垣間見える。
なぜなら、現行のビデオリサーチ社による視聴率計測は、人口分布に応じて計測される為、50代以上の男女(M3・F3層)にうける番組が高視聴率をとる傾向が強い。テレビ現場では「あなたのお父さん、お母さんがみるようなテレビ番組を作って下さい」と指示をうけることも珍しくないという。
このような状況下で今回の50代以上の男性司会者がMCの情報番組やトーク番組で無難に視聴率をとりにいく手段を講じざるおえない現場の苦渋ぶりもうかがえる。しかし、視聴率の計測方法は大きく変化をする真っ只中なのだ。
例えば、関東地区で4月から広告取引が「世帯」単位から「個人」単位に変更され(個人視聴率)、個人のリアルタイム平均視聴率と放送後7日目までに見られたタイムシフト(録画)視聴率のうち、CM枠部分のみを集計したCM枠視聴率が広告取引上で本格導入され、各地域でも順次導入が検討されている。
「全世帯で何%の世帯が番組を視聴しているか?」から「全人口のうち何%の人が番組を視聴しているか?」に変更される。
また、タイムシフト(録画)視聴率は関東地区で毎週算出されている。
今冬のドラマでみると「アンナチュラル」や「隣の家族は青くみえる」や「もみ消して冬」などリアルタイムは平均的な数字であるが、タイムシフト(録画)では高視聴率を出すなど違いが数字で現れている。
今年の4月からは関西地区、7月からは名古屋地区でもタイムシフト(録画)視聴率の測定が開始され、ますます重点を置かれることになる。
そして、デジタル時代が加速するにつれインテージのような視聴ログデータの本格導入も遠くはないだろう。
インテージの視聴ログデータをみると、1週間に1度以上録画する番組があるのは10代が最も多いのが意外だ。
ドラマの他「アメトーク」や「マツコの知らない世界」などバラエティ番組でもタイムシフトされやすい番組が数々存在していることがわかった。
リアルタイム個人視聴率とタイムシフト(録画)CM視聴率に加え、視聴ログデータ導入など指標が増える動きの中で、現行の世帯視聴率の高視聴率番組の司会者を抜擢しても目先だけの改編と言え、指標変化に対応できているとはとても思えない。
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奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。