人生に必要な9つの手紙と、仕事が楽しくない3つの理由

尾藤 克之
写真は同封されていた手紙と書籍画像

写真は同封されていた手紙と書籍画像

先週、オフィスに漆黒の箱が届いた。まるで、ブラックカードのinvitationと見間違うほどの重厚感だ。中身は、本田健さんの新著『大富豪からの手紙』(ダイヤモンド社)。丁寧にラッピングが施されている。同封の手紙には次のように記されていた。

「本書は3年がかりで執筆しました。完全なフィクションで、小説仕立ての自己啓発本にしあげました。大富豪の祖父が主人公の青年に、お金ではなく、9つの手紙を残したところから物語は始まります」と。本田健さんの代表作『ユダヤ人大富豪の教え』と同様に、メンターをテーマにすることで、読者に「人生の指針」を与えている。

ここで、本田健さんの経歴を簡単に紹介したい。100万部を突破した『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)を代表作とし130冊以上の著書実績がある。累計発行部数は700万部を突破するなど、日本を代表する著者の1人としても知られている。

人生に必要な9つの手紙

では、構成を見ていきたい。大富豪の祖父が亡くなったあと、主人公の20歳の青年に、お金ではなく、9つの手紙を残したところから物語は始まる。物語の舞台は、小樽、京都、神戸、タイ、ブータンへと移り、それぞれの地で、多くのメンターと出会い、人生で大切なものを学んでいくストーリーになる。

【「9つの手紙」の内容】
・第1の手紙:【偶然】(偶然に起きることはないし、偶然に会う人もいない)
・第2の手紙:【決断】(決断した瞬間に、その未来は、同時に誕生する)
・第3の手紙:【直感】(直感こそが、最も正しい人生のコンパス)
・第4の手紙:【行動】(行動しない限り、人生は1ミリも変わらない)
・第5の手紙:【お金】(お金の大切さを理解した上で、お金との距離にバランスを取る)
・第6の手紙:【仕事】(仕事は、あなたの才能を開花させる舞台)
・第7の手紙:【失敗】(成功するための唯一の方法が、失敗しても挑戦し続けること)
・第8の手紙:【人間関係】(幸せとは、「よい人間関係」にほかならない)
・第9の手紙:【運命】(私たちには、人生を変える選択肢が、毎日、与えられている)

第1の手紙から第9の手紙のすべてを読んで、最終的に何を感じるかがこの本の醍醐味になる。私は、次の2つが、本田健さんが伝えたかった「人生の指針」ではないかと感じている。「毎日、人生を選択する機会がある」「人生の豊かさはお金ではない」。

ここで、印象に残った箇所を私なりに解説したい。「キミは本田宗一郎を知っているかね?彼の人生のスタートは、自動車修理工場の修理工だった。あるとき、遠くへの買い出しに苦労していた妻の自転車に『エンジンをつけたら楽になるんじゃないか』と思いつき、オートバイ研究を始めたんだ」(P191)

現在、世界中にHONDAのバイクが走っている。そして、本田宗一郎は次のような言葉を残していた。「惚れて通えば千里も1里」という諺になる。「時間を超越し、自分の好きなものに打ち込めるようになったら、こんな楽しい人生はない」という意味になるが、それを実現するには、強いパッションが必要だ。

パッションは「情熱」「激情」と表現すればわかりやすい。オフィスに近いカフェにいる時、同僚の会話が聞こえてきた。どのように感じるだろうか?

A社員「会社を辞めて、海外に留学したいと思っています!!」
B課長「ん?てか、おまえ英語しゃべれたっけ?」
A社員「えっ、友人に行けばどうにかなると言われたので・・ダメっすか?」
B課長「辞めるのは勝手だけど。最低でも英検2級はないと厳しいね!」

英語が話せるから留学するのではない。行動しない限り、結果は残せない。あなたを揺り動かす「パッション」とはなにか。本田宗一郎の言葉を引用しながら「パッション」を説明する技術(テク)などは秀逸である。

仕事が楽しくない3つの理由

仕事が楽しくない理由は、3つ存在する。1番目は、「自分の才能に合っていない仕事をやっている場合」である。例えば、野球選手が力士になっても成功することは難しい。このケースは極端だが、仕事に意義を見出せない場合は、キッパリとやめてしまって構わない。

2番目は、「仕事のやり方が楽しくない場合」である。働き方や働く場所、契約のやり方が自分の理想とは違うとき、仕事は楽めない。例えば、都心で働きたいのに地方の支店だったり、正社員希望なのに非正規だったり、上司のパワハラも同じような理由になる。環境による影響は大きいことを知らなければいけない。

3番目は、「人間関係が良くないとき」である。好きなことをやっていても、人間関係が悪ければ楽しく仕事ができない。人が仕事を辞める、一番の理由は人間関係である。仕事がつまらなくても、給料が安くても、人間関係が良ければ辞めないとは思わない。

「人を喜ばせること」が仕事なのか。そして、自分の心が震えるのが、天職か。最高の未来は、自分で引くことができる。祖父の死から「偶然」がはじまり「運命」に導かれ帰結する著書最高傑作。本田健さんのメッセージを味わってもらいたい。

尾藤克之
コラムニスト