世界に浸透する中国の“赤いカネ”

海外中国メディア「大紀元」に中国の海外進出に対して警告を発する記事が掲載されている。俗にいう“中国マネー”問題だ。特にアフリカはその“赤いカネ”が大量に振りまかれ、「アフリカは第2の中国」という言葉すら聞かれるほどだというのだ。

▲「共産党幹部は赤い貴族だ」と主張するミロヴァン・ジラス氏(1986年12月15日、ベオグラードのジラス氏宅で撮影)

当方はスーダン出身の友人がいるが、彼を通じて数年前から中国企業のスーダン市場進出について聞いてきたが、「とうとうそこまで来たのか」という思いがした。
スーダンの場合、原油開発分野は中国企業に完全に乗っ取られている。資本と技術が乏しいので仕方がない面もあるが、中国国営企業の背後には中国共産党が控えている。ガブリエル独外相が先月のミュンヘンの安全保障会議(NSC)で演説したように、「中国は世界で唯一、グローバルな戦略に基づいて駒を動かしている国家」だ(「中国の覇権が欧州まで及んできた」2018年2月5日参考)。

友人は「スーダンでは商いで賄賂とか汚職といった風習はなかったが、中国ビジネスマンが進出して以来、わが国でも賄賂は至る所で見られるようになった」と説明してくれた。赤いカネは資本と技術だけではなく、中国の習近平国家主席も頭を痛めている政治家、実業家たちの腐敗をもスーダン社会に輸出してきたというわけだ。

大紀元(日本語電子版、3月3日)によると、アフリカだけではない。米国の裏庭に位置する中南米も中国の赤いカネが降り注がれ、「第3の中国」となりつつあるという。

具体的には、「チリ政府は2月28日、6.5億米ドルを投じて、中国企業・ファーウェイ(華為技術・HUAWEI)に共同委託している2万キロ以上もの光ファイバー通信網プロジェクトの着工を正式に発表した。この通信網が敷かれるチリ南部は、南極へのハブ港でもあり、英米の科学研究所や軍事施設も点在する。専門家は、中国資本のインフラ構築は、ラテンアメリカのみならず米国の安全保障と戦略的利益を脅かす恐れがあると指摘している」というのだ。

その中国マネーを牛耳っているのは中国共産党と国営企業だ。旧ユーゴスラビア連邦時代のチトー大統領の側近だったミロヴァン・ジラスは1950年代に出版した著書「新しい階級」の中で「共産党は赤い貴族だ」と喝破している。
元副首相だったジラスは「共産主義者は決して労働者の味方ではなく、貴族のような生活を享受し、富を貯蓄する者たちだ」と指摘した。同著書は欧米諸国で話題を呼び、旧ソ連・東欧諸国の民主改革にも大きな影響を与えた(「『赤い貴族』とスカーフの思い出」2015年2月9日参考)。

当方はベオグラードのジラス氏の自宅でインタビューしたが、ジラス氏は当時、「ポーランド、チェコ、ハンガリー、中国いずれの共産国も、固有の困難と課題を抱えている。共通する点は、共産党の一党独裁と官僚主義だ。共産主義者は政権の座に就くと、新しい支配階級に変身していく」と述べた。中国共産党の現状をみれば、ジラス氏の指摘は正鵠を射ている。同氏が表現した「新しい階級」は中国で久しく定着している。

中国はエチオピアの首都アディスアベバにアフリカ連盟(AU)の本部を建築し、その建物をAUに贈呈したが、フランスのメディアによると、AU本部のコンピューターは北京に繋がっているという。アフリカの政治、経済関連情報は中国に筒抜けというわけだ。中国人はただでは贈呈しない、ちゃんと見返りを得ているわけだ。

米紙ワシントンタイムズによると、ティラーソン米国務長官は6日から13日まで5カ国のアフリカ諸国(チャド、ジブチ、エチオピア、ケニア、ナイジェリア)を歴訪中だが、「中国は、世界で新興市場として台頭し、開発への魅力的な方法を提示しているが、実際は、短期的な利益を与えて、中国への長期的な依存を代償として手に入れている」と指摘し、アフリカ諸国へ警告を発している。

アフリカや中南米諸国だけではなく、欧州でも中国マネーに惑わされる国が増えてきたが、中国経済が今後も安定成長を続けていく保証はない。中国の投資に対する懸念の声が既に聞かれる。中国マネーには共産主義とその世界戦略計画が常にリンクされていることを忘れてはならない(「共産党から『赤』を取り戻そう」2015年2月28日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。