2018年3月中旬に差し掛かった。そろそろ本格的な春を迎えて、新年度の準備で慌しくなる。特に新入社員の方は社会人としてのマナーを心がけたいもの。日常のマナーが評価に大きく影響してくることも充分に考えられるからだ。「その他大勢」(言いかえるなら単なる普通)から抜け出すためのヒントになるかも知れない。
今回は、『ビジネスでもプライベートでも知っておきたいマナーの基本』(マイナビ文庫)を紹介したい。著者はマナー講師の西出ひろ子さん。主な実績として、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研)、「NHK大河ドラマ・龍馬伝」のマナー指導など幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師としても知られている。
お刺身の美味しい食べ方わかりますか
――まずは、お刺身の食べ方になる。山葵を醤油に溶く人がいるが、新鮮なネタならネタに山葵をのせて風味を味わいながら食したい。いきなり大トロから食べる人もいるがあれでは舌が麻痺してしまう。理にかなった食べ方をマスターしたいもの。
「お刺身は、味の淡泊なものから濃いものへと箸をすすめるのが基本です。したがって、白身と赤身があれば、白身から食べるほうが素材の味がよくわかり、よりおいしくいただけます。山葵は醤油に溶かさずに、香りや風味を楽しむために、お刺身の上に少しのせて食べるといいでしょう。」(西出さん)
「食べるときは、醤油を垂らさないように、小皿を口元まで近づけて食べると安心です。懐紙があれば、それを小皿代わりに使用してもいいです。お刺身に添えられたつまやしそは飾りではなく、魚の生臭さを消すためのもの。また、消化を助ける役割もあるので、お刺身と一緒に、もしくは交互に食べるといいでしょう。」(同)
――花穂じそなどの薬味は手で取って醤油に落とすことが多いが、左手で持ち、箸を使って醤油の小皿へしごき落とすのが基本。箸使いに自信がなければ、手で取って醤油に落としてもマナー違反ではないので、あまり難しく考えないほうがいいだろう。
「にぎリ寿司は箸でも手でもどちらで食べてもOK。ただし、1人前ずつ器で出されたら箸を使うほうがエレガント。カウンターなどに座って目の前で握ってもらうときは、手で食べるほうがツウと言われていよすが、箸で食べてもかまいません。手で食べる場合は、軽くつまみ、人差し指でネタの上を押さえるように持ちます。」(西出さん)
「そのまま軽く持ち上げたら、ネタの先に醤油をつけて食べます。箸で食べる場合も、ネタの先に少しだけ醤油をつけます。軍艦巻きの場合は、倒したりせずに、そのままつまんで海苔の下部に醤油をつけて食べます。にぎり寿司を食べるときは、ご飯がポロポロとくずれないように気をつけて。お寿司は基本、ひと口で食べます。」(同)
懐紙を効果的に使いましょう
――「懐紙」、みなさんはお持ちだろうか。懐紙とは、茶事で使用されている懐に忍ばせておく小さめの和紙で、器の飲み口を拭きとったり、菓子器に盛られた菓子を受け取ったり、食べきれなかったお菓子を包んだりするのに使用する。
「『ふところ紙』『たとう紙』ともいいます。お茶席以外でも、小皿の代わりにしたり、口元の汚れをおさえたり、お金を包んで渡したりなど、さまざまな使い方がされています。特に正式な和食の席では、洋食のように紙ナプキンが用意されていませんので、何枚か持参するのが女性のたしなみのひとつとされています。」(西出さん)
「懐紙の準備がなければ、ティッシュペーパーを使ってもよいのですが、懐紙を使った方が、エレガントで女性らしい印象を与えてくれますので、常備することをおススメします。最近では、おしゃれな懐紙入れもたくさん販売されていますから、好みのものを選んで、愉しい気分で持つことができると思います。」(同)
マナーは文章だとわかり難いかも知れないが、和のマナーには、最初に出されたときと同じ位置で終わらせる(つまり原状回復)という考え方があるそうだ。原状回復で、現状回復ではないのでご注意を。もし文章に迷ったら、拙著も役立つかも知れないのでご紹介をしておきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)
尾藤克之
コラムニスト