独で171日ぶり大連立政権発足

ドイツで第4次メルケル政権が14日、正式に発足した。ベルリンの独連邦議会(定数709議席)は同日、与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)と第2党「社会民主党」(SPD)が擁立したメルケルCDU党首を賛成多数で首相に再選した。これを受け、メルケル首相は即、大統領府でシュタインマイヤー大統領から正式に任命証を受けて第4次メルケル政権をスタートさせた。昨年9月24日の連邦議会選後、171日ぶりの新政権誕生だ。新政権(任期4年)はメルケル首相(CDU)、オラーフ・ショルツ副首相兼財務相(SPD)を含む16閣僚(CDU/CSUから10閣僚、SPDから6閣僚)から構成されている。

▲連邦議会で首相に選出されて喜ぶメルケル首相(2018年3月14日、ベルリンの連邦議会で、ドイツ民間放送の中継放送から)

連邦議会(ヴォルフガング・ショイブレ議長)の首相選出投票では、メルケル首相の再選を支持した議員は364議員、反対315議員だった。CDU/CSUとSPDの連邦議会の議席数は246議席と153議席で両党合わせて399議席だから、大連立政党から35議員が反対か棄権に回ったことになる。無記名投票だから誰が反対票を投じたか不明だ。メルケル首相を支持した364票は前回の2013年の時より44票少ない。

メルケル首相のCDU/CSUは昨年9月の総選挙で第1党の地位こそ維持したが、前回2013年の得票率が8・6%減少。一方、SPDは前回比で得票率を5・2%減らし、20・5%の得票率は党歴代最悪の結果だった。歴代2番目に悪い投票結果だったCDU/CSUと党歴代最悪の記録を作ったSPDが再度、大連立政権を発足したわけだ。独週刊誌シュピーゲルは「敗者の大連立政権」という見出しを付けたほどだ。

メルケル首相は昨年12月31日、新年のテレビ演説の中で、「世界はドイツをいつまでも待っていない」と述べ、“欧州の盟主”ドイツの早期新政権発足が国際社会への義務だと強調してきたが、大連立政権の焼き直しに対する国民の目は厳しいうえ、大連立政党内でも第4次メルケル政権の発足に批判的な声が依然強い。第4次メルケル政権は党内外で厳しい批判の声を受けながらのスタートとなった。

昨年9月の連邦選挙後、メルケル首相は「自由民主党」(FDP)と「同盟90/緑の党」とのジャマイカ連立政権の発足を目指したが、FDP離脱の結果、挫折。SPDが選挙直後、野党に下野すると早々宣言したため、メルケル首相は連立パートナーを失い、再選挙は回避できない状況下に陥ったが、SPD出身のシュタインマイヤー大統領がSPDを説得。SPD内に強い反発の声があったにもかかわらず、CDU/CSUとSPDの大連立政権の再現にこぎつけた経緯がある。

なお、メルケル首相が任期4年間を全うせずに後継者に政権を譲るのではないか、といった憶測が流れてきたが、メルケル首相は「任期4年間を全うする」と早期交代説を否定している。メルケル首相は任期を全うしたら、政治の恩師、故ヘルムート・コールを抜いて16年間の最長在任期間となる。

欧州経済は順調に回復、成長してきたが、欧州連合(EU)内は決して一枚岩ではない。ロシアや中国は欧州の統合を阻害する動きを示しているうえ、難民問題でハンガリーやスロバキアがブリュッセルの難民収容の分担案を拒否するなど、加盟国内で対立が目だつ。それだけに、EUの盟主ドイツで経験豊富なメルケル首相の大連立政権が発足したことは少なくとも朗報だろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。