トランプ政権の屋台骨が揺らいでいる。ティラーソン国務長官を解任し、セッションズ司法長官の解任も取りざたされている。1年間あまりで、これだけホワイトハウスのメンバーが入れ替わった例がないそうだ。このような混迷の中、貿易摩擦も中国が標的だと思っていたら、突然、日本と韓国にも矢を向けた。
韓国に対しては、不公平な状況下では、在韓米軍を撤退するとも触れたようだ。日本に対しては、自動車が不公平だと言い出した。日本企業は国内が右側ハンドル仕様だが、アメリカ向けは左側ハンドル仕様にして販売している。そもそも、どうしてアメリカ人が日本車を買い、どうして日本人が米国車を買わないのか、ちゃんと調べているのか疑問だ。今では改善されたが、ガソリンが高い日本で、燃費が悪く、走りにくい大きな米国車、しかも右側ハンドルでは、買うはずがない。そして、日本の企業が米国内で自動車の生産をしている実態を把握しているのだろうか?ビジネスマンであるはずなのに、なぜ米国車が売れないのかという分析が甘い。
そして、米朝対話を受け入れると発表したあとに、国務長官を対話重視型から、保守派の代表であるCIA長官を指名したことが謎だ。米朝対話の受諾後、翌日には報道官は、「条件が整えば」と付け加え、本当に5月までに対話が実現するのかどうか、霧の中だ。そして、ツイッターで国務長官を解任することを公表してから数時間後に、本人に連絡するという方法も私には信じがたいことだ。FBI長官の解任も似たような状況だったので、これがトランプ流の「逆らう人間を後ろから切りつける」手法なのだろうが、どうも感心できない。
米国の政治が不安定であるので、日本は「一寸先は闇だ」に備えて対応できる政治の安定が必要だ。米朝関係だけでなく、貿易摩擦問題が広がりを見せている中で、野党や一部のメディアは安倍政権潰しに過熱状態だ。書き換え問題は大きな問題だが、モリカケ問題が「忖度があったかなかったか」レベルならば、東アジアの流動的な現状や貿易問題と比してそれほど重要な問題なのか、私は疑問だ?
後者は、日本の将来に影を落とす大問題だ。上からの指示があったのかどうかの実証が鍵であり、忖度があったのかどうかなど国会で議論するような問題ではないのだと思う。私の部下が、私の気持ちを忖度して間違った行為をした場合、私が責任を負うべきだとは思わない。あまりにもヒステリックに騒ぎ立てる状況下で、日本をどんな国にするのか、貿易摩擦は?、医療保障は?、北朝鮮問題は?などの課題はどうするのか?国会では、現状の国際情勢に対する認識がどうなっているのだろうか?
そして、安倍総理がアメリカに行くのは森友問題から逃げるためだと頓珍漢なコメントをしていた元議員がいた。父上は今太閤と呼ばれた人だったが、こんなレベルの見識しか持たない野党に国が託せるのか?大震災時のような混乱はもうごめんだ。
編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年3月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。