国土交通省は3月27日、2018年1月1日時点の公示地価を発表した。これによると住宅地の全国平均率は10年ぶりに上昇に転じ、商業地及び全用途平均は3年連続の上昇となった。低金利や訪日外国人旅行者の宿泊施設需要、利便性が高い立地の住宅需要増等がその背景にあるのだろう。
毎年注目される公示地価だが、これは実際に「売れる価格」や「買える価格」ではない。
そもそも公示地価の役割とは次のようなものだ。
・一般の土地の取引に対して指標を与えること
・不動産鑑定の規準となること
・公共事業用地の取得価格算定の規準となること
・土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
・国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること 等
(国土交通省HPより)
つまり、公示地価は既述のように「売れる価格」でも「買える価格」でもないが、公示地価は一般の土地取引の指標となる為、この価格が上昇すれば実際の土地取引の価格も上昇基調にあると言える。
この公示地価が「全用途・全国平均率で3年連続の上昇」と聞くと、所謂バブル期のように「日本中の土地が値上がり」している様な印象を持つ。しかし、地価公示の内容を見ると、実際には土地価格の格差が広がっている現状が浮かび上がってくる。
国土交通省HPの「利便性等による地価動向の差異」を見ると、最寄り駅等からの距離別の平均変動率にかなりの差があることが分かる。
まず、三大都市圏・住宅地の最寄駅等からの距離が0.5km以内では平均変動率が1.7%で高水準なのに対し、1.5km~2km未満の変動率は0.1%と低い水準にとどまっている。さらに2km~3km未満の変動率はー0.1%と下落に転じ、5km以上ともなればー1.1%と大きな下落となっている。
地方圏の住宅地はさらにその格差が見てとれる。地方圏では変動率がプラスに転じているのは最寄駅等からの距離が1km未満の場合であり、それを超えると変動なし若しくはマイナスである。
このような「利便性」に価値を見いだすという傾向は、都道府県別の人口増減の現状からも窺い知ることができる。総務省の人口推計(2016年10月1日現在)によると日本の総人口は6年連続で減少しているが、15都府県では人口が社会増加(都道府県間転入超過数+都道府県別入国超過数)している。※自然増減は考慮しない。
これは利便性の高い都市にその価値を見いだした「移住、住み替え」が多いことを表していると言っていいだろう。
公示地価の全国平均率の上昇によって「資産デフレの解消」を報知するマスコミの論調も多くみられるが、公示地価が上昇しているその側面には、土地に対する経済的な評価意識の変化等による「地価の地域間格差の拡大」が顕在していることも忘れてはならない。