心理学者の榎本博明氏に拠ると、最近の大学生には『「内向的」「情緒不安定」「引っ込み思案」などの言葉が通じなくなってきている』ようで、「多くの大学教員が、学生に対して心理検査やアンケート調査ができなくなってきたというが、それは質問項目の意味がわからないという学生が増えてきたからといわれている」とのことです。
日本の大学というのは入学時点で勉強を終えたと考える学生が非常に多く、アルバイトや遊ぶ為に大学に入っているといった状況です。大学本来の姿とは言うまでもなく、学生の本分は学業に徹し、勉学を通じ学生諸君が互いに切磋琢磨しながら知性を磨き合い、その中でまた人間力も併せて磨くことにあると思います。
SBIグループの新卒採用では私が全て最終面接を行っていますが、「大学に入って何をし、何を学んだか」と聞くと、その殆どがアルバイトとサークルの話です。「学業中に○○を身に付けました」と発言する人は全くと言って良い程おらず、「一体何の為に大学へ入ったのかなぁ」と思うような低レベルの学生が大変多く見受けられます。
スポーツで言っても、体育会に入り本格的に鍛えたということであれば、それはそれでそれなりに人格と体力の錬磨にプラスになる部分も多々あると思います。しかし、テニス等の社交的倶楽部の類に入り、そして暇があれば雀荘に通い詰め、どれだけ稼いだ・儲けたと浮かれているようでは御話になりません。
大学とは最高学府(…最も程度の高い学問を学ぶ学校)であるとの認識の下、夫々の分野で専門知識を身に付けると共に、一般的な教養を深め多いに読書を様々しながら知を磨いて行かねばなりません。明治の知の巨人・安岡正篤先生が言われる長期的・多面的・根本的に物事を見るといった物の見方・考え方を養い視野を広げるのが、正に大学という場でありましょう。
大学の授業料だけでなく、生活費や小遣いまでも親から貰っている学生が、何故アルバイトをしなければならないのでしょうか。アルバイトで遊ぶ金を作るなどして遊び、勉学に費やすべき時間が奪われてしまっているのです。此の類の学生は論外としても、学費を稼ぐ為どうしてもアルバイトをやらねばならない、といった学生も勿論いるでしょう。
しかし、そうした場合も私であれば「奨学金を幾つか取ったら間に合うのではないか」とか、「特待生になるべく死に物狂いで勉強すれば良いのではないか」とかと思います。大学を出たら幾らでも働けますから、私自身は学生時代アルバイトに価値を見出さず、唯の一度もアルバイトをしませんでした。
最近の大学生は、何ゆえ本分である学業に精一杯励まないのでしょうか。彼等がそうなる理由の一つとして、日本の小中高を通じての所謂「暗記教育」、暗記とテクニックで高得点を稼ぎ得る英国社数理中心のペーパー試験偏重体制が挙げられると思います。
要するに現代の教育システム下、記憶力だけが能力を図る唯一の尺度であるかの如き詰まらぬ受験勉強を経験してきたことに因るのではないでしょうか。大学に入れば、若者の知的好奇心をくすぐることのない面白くない勉強は終われりになってしまうのではないでしょうか。日本の教育体制の在り方として、オリジナリティや歴史観・世界観・人世観といったものを養い、物の見方・考え方を育てるようなものに変革して行かねば、根本的解決とはならないと思います。
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