米国で10年債利回りが3%を突破したと報じられた。
金利が上がると債券価格が下がるというのは金融の常識だが、ここでもう一度おさらいしよう。
話を単純化するために、確定利息5%で来年満期が来る100万円の債券をあなたが持っているとしよう。
利息は決まっているので、その債券を持っていれば来年の満期に元金100万円とは利息5万円を手に入れることができる。
急にお金が必要になったあなたは来年まで待っていられなくなった。
そこで、手元にある先程の債券を売ることを決意した。
市場で売却しても同じとしよう。
現在の日本のような低金利なら、1年後に5%の利息がもらえる元金100万円の債券は(とりわけ安全な国債であれば)誰でも喜んで買ってくれる。
101万、102万…と元金より高い値段で買ってくれる人で次々と現れ、104万円で売れたとしよう。
買った人にとっては、1年後の106万円が現在の104万円と同じということを意味する。
債券そのものが安全であれば、104万円のお金を投じて1年後に元本100万円と1万円の利息が得られるので、銀行の定期預金よりもウンと有利だ。
銀行の定期預金を崩してあなたから債券を買った方が得だ。
ところが、今の日本のように実質ゼロ金利ではなく、市場金利が6%だとどうなるか?
1年後に105万円にしかならない債券は100万円では到底売れない。他で100万円を運用すれば1年後には106万円のリターンになるのだから。
そこで、あなたは、泣く泣く99万円で売却する羽目に陥る。
これなら売れるだろう。
元金100万円を他で運用すれば1年後の儲けは6万円だが、あなたから債券を買えば99万円で同じ6万円が手に入るのだから。
もし、市場金利が10%だとしたら、あなたは100万円の債券を97万円でも売ることはできない。
あなたの債券を97万円で買った人が1年後にもらえるお金は元本97万円と利息5万円を足した102万円だ。
同じ97万円を10%の金利で1年間運用すれば利息は9万7000円になり、トータルで106万7000円が得られるからだ。もっともっと値段を下げないと、誰も買ってくれない。
このように、市場金利が高くなると債券価格を安くしないと売れなくなる。
これが、金利が上がると債券価格が下落するということだ。
逆も同じで、債券価格が下落すれば金利は上がる。
100万円で買った債券の市場での値段が97万円になれば、1年後の満期には元金100万円と利息5万円を合わせた105万円になる。
金利換算すれば8.2%以上になり、債券の元の利息5%より高くなるからだ。
米国の10年債利回りがじわじわと上がって3%を突破したというのは、日経平均株価がじわじわ下がって(節目の)2万円を割ったようなものだ。
「ここが買い時」とばかりに買い手が増えれば(債券が高くなって)利回りは下がるだろうし、「こりゃだめだ」という雰囲気になれば、(債券が下落して)利回りは更に上がる。債券の場合、永久債でない限り株式と違って満期がある。満期まで持っていれば(発行元が潰れない限り)元金と利息はきっちり払われるので、その点が株式投資とは異なる。
以上の説明はものすごく大雑把なものだ。
私が銀行に入った1年目、日経新聞を読んでいて「国債価格下落、金利上昇」という内容の見出しの意味がなかなか理解できなかった。
私自身の経験を踏まえ、新社会人諸氏を対象に平易に書いたつもりだ。
なお、本稿では、利息、金利、利回りという表現はイメージし易いように”場当たり的”に使用している。
厳密にはそれぞれ異なる意味があるので、これを機に調べてみてもらいたい。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。