東京都北区議会議員の吉岡けいたです。
社会には各業界、仕事の成功本・ノウハウ解説書が多数あります。
「5年以内にコンサルタントで独立して成功する法」
「セミナー講師超入門 1年目からうまくいく」
「他人より年収10倍稼げる税理士になる方法!」等など
他に、スポーツが上達する方法、メンタルカウンセラーの指針などが多数あり。いずれも、どのように仕事スキルを上げ、資格を取得し、集客や成功につなげていくか、その道のプロが詳しく教える書籍です。
そこで疑問。
どうして、地方議員・国会議員の仕事について、ノウハウ本、成功する本は誰も書かないのか?
実際には、制度の解説程度であれば簡単な専門書は存在します。
しかし、その道のプロ(特に選挙に強い議員先生)が選挙に勝つ(強くなる)方法を詳細に解説した本を出版した話は聞きません。
例えばですが、当方が読みたいテーマは次の通りです。
①地元組織や有権者と地方議員が良好かつ相互支援の関係をつくる方法
②後援会の作り方と維持強化の工夫、支援者名簿の増やし方
③行政機関に対して効果的な交渉方法
経験と検証に基づく「議員活動マニュアル」的な書籍があれば、高額でも購入します。
何故ないのでしょうか?
「成功する地方議員になる」ための本が出版されない理由は以下の通りと考えます。
1)選挙に勝つための秘策と経験を惜しげもなく提示すれば、自身の選挙と議員活動に影響があるため。
一般的な仕事と違い、地方議員の仕事は、その質と評価が選挙による票に反映されます。他業は金銭や契約内容により評価されますが、選挙に勝つための方法は各自がそれぞれの方法で創意工夫により、独自で編み出していくもの。よって、全ての経験と知識については、表に出てこない事があると推測します。
2)何をもって成功する地方議員とするか、基準が不明確。つまり、仕事の質と成功がリンクしずらい特殊な業界と言えます。
プロスポーツであれば、勝負に勝つか負けるか、技術が上か下か、力と能力で評価が決まる。その他、多くの技術職もそうです。
しかし、地方議員(国会議員もそうですが)の場合、「政策立案能力」「どれだけ質の高い議会質問をしたか」「法案審議でいかに多くの質疑を繰り返し、行政事業のチェクを厳しくできたか」といった本来、議員として評価されるべき能力は、そのまま成功(評価)となりません。
例を挙げれば、今年10月の衆議院議員選挙が行われた際、小池都知事に対する数字が報道されたことが話題になりました。
「都政新報」という自治体専門誌が小池都政の1年間を総括した評価の数字です。
「落第点」「合格点は与えられない」が57.1%
「スピード感は評価する声は63.6%」。これは石原都政1期目平均の71.1と比べて低い。
(次の記事を参考にしました⇒『都職員の評価「小池都知事は舛添以下」都政誌が糾弾』(まいじつ))
しかし、この評価と数字には罠があります。それは、この評価が都職員アンケートを基にしたことです。
つまり、行政職員からすれば、改革や新しい手法で今までのやり方を根底から見直しを要求してくるトップに対して、反発がある事を前提に考えなけれななりません。基本、行政とは「前例踏襲」を良しとするためです。
当方から見れば、行政職員から評価されない、嫌われるくらい厳しい改革姿勢で前例踏襲の仕組みを根本から変えていく仕事こそ、評価されるべきと考えます。小池さんはマスコミから嫌われてしまった部分を感じました。
都知事と議員の違いはあるにせよ、政治家という点では同じ。地方議員の仕事の成功と評価について、基準が難しい以上、「成功しました」という成果を公にしにくい現状があります。
3)「選挙に強くなるために、政策を訴えない」議員がいる事。
「議員は政策を語るな」という事を平気で訴える議員がいます。おかしな話ですが、政策を絞り、理論的に政策を作っていく過程で、すべての民意を吸収できる方法がない事が明らかになる事を嫌う議員が多い。「高齢者福祉を充実しよう」「障がいがある人の保険料負担を下げよう」といった「手当充実・安心安全の確保」を訴えることは多くの議員は大好きです。
しかし、「社会保障費の適正化を考えよう」「生活保護の不正受給を見直そう」「憲法を時代に合った制度に改正しよう」といった民間の経営面者視点からみたら当たり前な政策を訴え始めると、とたんに「弱者の排除」「冷たい合理主義者」といって現実から目を反らす地方議員(国会議員)が続出します。
基本、選挙で勝つには、議場で政策討論や事務所で調査研究に時間を費やすことではなく、とにかく駅頭で演説し握手を続ける事、政策を訴えず、単に「福祉の充実」「緑と自然のある環境を」といった言葉でコミュニケーションをとり続ける事。これこそが政治家の仕事だと考える地方議員が、実際にいます。それも多数・・。
こうしたルーティンを日々続けることが実際に選挙で勝てる方法かもしれませんが、そんなノウハウが書かれた書籍自体、社会改変の役には立たないですね。よって、世に出てこない事となるのでしょうか。少なくとも、そうしたノウハウ本なら当方は要りません。
上記の考察は、あくまでも私、吉岡けいたの推察によります。
しかし、今、地方議会改革についての関心が高まってきたことは事実です。各地域で改革派の無所属議員、自身の行動で議会を変えていくことに挑戦できる議員が増えてくれば、今の状況は変わります。
本当の地方議員の成功とは、自身のためでなく有権者から感謝される結果を出せる仕事ができる事ですね。自身も有権者が求める仕組みづくりとは何かを日々考え、取り組んでいきます!
吉岡 慶太 東京都北区議会議員(無所属)アゴラ出版道場3期生
区職員(23年間、生活保護ケースワーカー10年他)を経て、2015年から現職(1期目)