アメリカ人が気付かない、広い住宅の落とし穴

安田 佐和子

アメリカ人が住む一戸建てと言えば、土地の広さを存分に生かした贅沢空間というイメージが先行しますよね?

「大きいことは良いことだ(Bigger is better)」の国民性で知られるように、米国の一戸建て住宅の面積は年々、景気と歩調を合わせ拡大してきました。実質GDP成長率が2.9%増を達成した2015年には、建設完了ベースでの一戸建て住宅の面積・中央値は2,467平方フィート(約229.2㎡=69.3坪)、平均で2,687平方フィートと過去最高を更新したものです。日本では延床面積が2015年時点で平均37坪ですから、その違いが際立ちますね。米国の一戸建て住宅の面積・中央値は2016年に前年比1.8%減の2,422平方フィートになったとはいえ、過去最高レベルを維持。米国では、引き続き大きな家が好まれているようです。


(作成:My Big Apple NY)

しかし、ここで疑問が生じます。アメリカ人は、大きな家を有効利用しているのでしょうか?

ある研究では、アメリカ人が無駄に大きな住宅に居住している実態が浮かび上がります。こちらをご覧下さい。


(出所:Get Rich Slowly

UCLAがロサンジェルスに居住する世帯を対象に住宅内での動線を調査したところ、利用するスペースが偏っていることが分かります。台所周辺と、TVのあるファミリールームに集中していました。調査によれば、家庭内で68%の時間をキッチンとTVのある部屋で費やしていたといいます。逆にポーチやダイニングには、ほとんど足を向けていません。広くて大きな住宅をご購入しても、家族が集まる場所は限られているというわけです。また、ガレージを本来の目的のために使用している割合は25%程度で、それ以外は倉庫として利用し、車は路駐させるパターンが多いといいます。

無駄なスペースを所有するために、余計な資金を投じるべきなのか。所得がかつてのように加速しないなかで、一部のアメリカ人の間で現実的な考え方が広がりつつあるようです。

(カバー写真:Alex Calderon/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年5月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。