東京都の受動喫煙防止条例案を解説します!

こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。いよいよ「東京都受動喫煙防止条例(案)」が6月の議会に提出されます。本条例案については、大変多くの方々からご質問を頂いております。条例が難しいというご意見も頂いておりますので、今回はQA方式で解説します。

Q1. どこが禁煙になるの?

多くの方が利用する屋内施設は全て禁煙になります。具体的には、ホテル・事務所・鉄道・バス・タクシーなどです。さらに、幼稚園・保育所・小中高校・行政機関・病院などは、屋内だけでなく敷地内も禁煙になります。これは、特にタバコの健康影響を受けやすい子どもたちに配慮したものです。また、飲食店も規制の対象ですが、やや複雑なので次の項目に譲ります。

Q2. 飲食店はどうなるの?

東京都内の飲食店は原則禁煙になります。ただし、次の条件を満たす場合のみ例外です。①従業員がいない、②客席面積100㎡以下、③資本金5千万円以下、④事業者が喫煙可を選択、の4条件です。特に、弱い立場にある従業員を守りたいというのがポイントで、「望まない受動喫煙を防ぐ」という本条例の全体を貫く考え方に基づいています。条例が制定されると、東京都内の飲食店のうち、少なくとも約84%が禁煙になる見込みです。

Q3. 条例を守らなかった場合にどうなるの?

違反者に対しては、5万円以下の罰則があります。喫煙禁止場所において喫煙し、喫煙の中止や退出をしない場合に適用されます。また、施設の管理権限者については、改善命令に従わなかった場合に適用となります。

Q4. 喫煙者はどこでタバコを吸えるの?

対象施設においては、完全に密閉された喫煙専用室内のみ喫煙ができます(ただし、喫煙専用室内での飲食は認められません)。また、シガーバーやたばこの販売店等でも喫煙が可能です。屋外の喫煙を規制している自治体もありますが、今回の都条例では屋外の規制はありません。密閉空間となってしまう屋内の方が、受動喫煙の影響は何倍も深刻であり、世界各国でも屋内規制が重視されています。

Q5. そもそもなぜ受動喫煙の規制が必要なの?

日本では、年間1万5千人が受動喫煙の影響によって命を失っています。他人のタバコの煙による「望まない受動喫煙」を防ぐことは、人権に関わる重大な問題です。しかし、これまで国会では、約260名の国会議員からなる「自民党たばこ議員連盟」を中心に、多くの議員や業界団体によって対策が骨抜きにされてきました。2020年に五輪大会を控える東京都は、国に先駆けて国際標準の条例制定を目指しています。

Q6. いつから条例が適用されるの?

本年6月の都議会定例会で可決されれば、2020年より罰則適用も含めて全面施行する予定です。飲食店事業者の方々などが、体制を整備するのに必要な期間を考慮して決められています。

Q7. 今後の議論の焦点は?

本条例案はまだ確定されたものではありません。特に、加熱式タバコについては、紙巻きタバコに比べて研究データが少なく、どこまで規制するべきか議論の余地が残されています。また、本条例における罰則は過料であり、警察の取り締まりの対象外です。条例の実効性を担保するためには、継続的に検証・改善していく必要があります。

以上、これまで多く頂いたご質問をピックアップしてお答えさせて頂きました。今回の東京都の受動喫煙防止条例は、日本全国の自治体に波及するだけの大きな可能性を持った条例です。タバコを吸う人も吸わない人も、それぞれの権利が守られるように、6月の都議会ではしっかりと議論を重ねていきたいと考えています。


編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年5月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。