政府IT新戦略

内閣官房IT本部から、IT新戦略の方針を伺いました。
行政サービスのデジタル改革を断行する、とのこと。
1.行政サービス100%デジタル化
2.行政保有データ100%オープン化
3.デジタル改革基盤整備
の3本柱。
100%とは、霞が関らしからぬ「覚悟」がうかがえて、好ましいです。

1.行政サービス100%デジタル化
行政の全サービスが最初から最後までデジタルで「完結」する社会を実現する。
戸籍謄本など紙の添付を不要とする法令改正作業に着手、社会保険・税の書類デジタル化も進める。
「デジタルファースト関連一括整備法案」も視野に入れるそうです。

4万3000種類の行政手続のうち、オンライン化しているのは5千件、12%。
紙の書類を求めている手続が多いためです。
社会保障の給付や旅券発行などの際に戸籍謄本などを市町村から取り寄せる必要があります。
それが年4700万件。
登記事項証明や住民票などを含めると添付書類が必要な手続は年2億件!

添付書類を含め、徹底的なデジタル化を進めるという方針です。
また、そもそも行政手続のうち98%の申請が、0.9%(395手続)の種類に集中しているそうです。
申請件数が少ない手続は、手続そのものが要るのか、ということも抜本的に見直すそうです。

これらを進める「デジタル化3原則」として、
・デジタルファースト:国民が手続・サービスをデジタルで完結できる
・ワンスオンリー:一度提出した書類は再提出不要
・コネクテッド・ワンストップ:一か所でサービス完結
を掲げています。

2.行政保有データ100%オープン化
オープンデータを徹底し、データ活用イノベーションや新ビジネス創出を後押し。
行政保有データの棚卸しリストを公開。
オープンデータもスタートから6年。推奨から義務へと踏み込みが強まってきました。

とはいえ、全行政手続に関するデータのうち、電子的に管理されているのは20%。
統計関連データのうち、完全にオープン化しているのは45%。
オープンデータに取り組んでいる自治体は17%だそうです。
まだまだです。

3.デジタル改革基盤整備
国・自治体・民間の基本ルールを構築;語彙・コード・文字等の標準化。
戸籍のオンライン化は、各市町村が個別に構築したシステムの文字コードなどの互換性が課題。
年末にIPAが漢字6万字のISO規格化を完了させたと発表しました。
これらとの連携です。

その上で政府は民間部門のデジタル改革とITデータ活用ビジネスを推進する方針です。
農業・物流・港湾等の連携プロジェクトやテレワークの推進、民間保有データと組み合わせたオープンデータの活用、シェアリングエコノミーの活用などを進めるとしています。

ぼくはオープンデータ機構VLEDやデータ流通推進協議会DTAの理事として官民連携の活動に取り組むとともに、シェアリングエコノミー協会の認証スキームに関わり、これらIT戦略が進むよう後方支援しています。
内閣官房IT本部は、各省に圧力をかけるとともに、民間と連携する、いい仕事をしています。

オープンデータ機構VLED
https://www.vled.or.jp/

データ流通推進協議会DTA
http://data-trading.org/

シェアリングエコノミー認証制度
http://bit.ly/2mZczy4

一方、ぼくが座長を務める政府・知財本部でもデータ流通やその知財としての戦略は重要事項で、IT本部との連携が以前からの課題。
ハード(IT)+ソフト(知財)の総合戦略。
進めてほしいな。

ぼくはITと知財の本部を組織統合して、他省のIT政策や文化政策も一体化して「文科省」を作ればいいと考えるのですが、実に近い構想を経団連が「デジタル省」として提唱しはじめたので、議論が盛り上がるかもしれません。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。