週末にド級の“文春砲”が飛んできたと思ったら、発射したのは週刊文春ではなく御本尊の文藝春秋だった。あす9日発売の7月号で、小池百合子氏のカイロ在住時代の同居女性の証言などを元に「カイロ大学卒業」としていた彼女の学歴詐称疑惑を報じている。
「小池百合子さんはカイロ大学を卒業していません」と元同居女性が証言(文春オンライン)
本誌の予告記事が流れたのはきょうの昼頃。折しも金曜は都知事の定例記者会見が入っている。AbemaTVに至っては急遽クルーを都庁に派遣したのか、緊急放送までする力のいれようで、さてどうなるかと思っていたのだが……。
【生中継】
小池百合子都知事に”経歴詐称”報道 。
カイロ大学を卒業していないとの疑惑が報じられる中、記者会見でどう答えるのか。▽ただいまAbemaNEWSで生中継中
— AbemaTV@今日の番組表から (@AbemaTV) 2018年6月8日
結局、都庁クラブの定例会見の時点(15時前終了)では、この問題について誰も質問することはなかったようだ。
もちろん、天下の「文春砲」といっても、新聞、テレビ各社が最低限の裏付け取材をしていない中で追及するには困難だ。せめてものゲラを入手してその中身を読んでからでないと質問はしづらい。記者会見開始の14時までに各社がどこも入手できなかったのかどうか。
少なくとも夕方までには都庁記者クラブや都政関係者の間でゲラは出回っていたようだが、仮に会見の前に入手していたとしたら質問すらしないのは「不作為」だろうし、あるいは会見後に入手したのであれば、あすの発売日以降も、新聞やテレビが真面目に追及しないままなら、読者や視聴者から「報道しない自由」の行使だったのか、ある種の「忖度」をしているのかどうか厳しく問われるのではないか。
「都政」に関する質問に限る規制をかけているとの情報もあるが、そうだったとしても都知事選の選出過程に疑義が呈されてはいるから、社会部の猛者たちが追及しない理由にはならない。
政界では、過去に選挙公報に示した学歴の詐称(公選法違反)で国会議員が失職した事例があるが、実は一報があった当初、私自身は「あの海千山千の小池さんがそんな稚拙な“犯行”をやるものか」と疑問だった。2年前の都知事選の当時も学歴詐称疑惑が浮上するや、若き日の小池氏の写真が入った「卒業証書」とするアラビア語の書面を提示はして打ち消していた。
これが「カイロ大学卒業証書」とのこと。小池さんのカイロ大学卒業は中東専門家の間でもかなり有名。 pic.twitter.com/y3rj66FVeK
— 野口健(アルピニスト) (@kennoguchi0821) 2016年8月6日
蓮舫氏の国籍疑惑勃発時と同じになるのか?
さてどれほどのものだろうか、さきほど私も遅れて記事の中身を確認したが、天下の文藝春秋が掲載するからには、勝負をかけるだけの状況証拠はしっかり揃えてきたように思った。執筆者のノンフィクション作家、石井妙子氏は、昭和の名女優の実像を追いかけた『原節子の真実』で第15回新潮ドキュメント賞を受賞したベテランの書き手だ。政界筋によると、石井氏は、遅くとも昨年秋ごろには取材に着手していた模様で、この間、相応の準備を積み重ねてきたのは間違いない。前述の「卒業証書」についても説得力のある言及をしていて、詳しくは記事を読んでいただければと思う。
このあと、小池氏が文春や石井氏を名誉毀損で刑事・民事で法的措置をとってくるのか、政治生命をかけた反論をしてくる可能性もありそうだが、文春側は当然それくらいは折り込み済みであろう。どちらにせよ、過去の選挙で示してきた学歴が真実なのかどうか。都民の関心としてはその1点に尽きるわけだが、真相追及への力学が働くかは世論の動向が大きい。そしてそれが動くかどうかは、都庁記者クラブに加盟する新聞、テレビなどの大手メディアはカギを握るのはたしかだが、「事なかれ主義」で静観を決め込むのかどうか。
東京の選挙での経歴詐称疑惑といえば、蓮舫氏の国籍問題があった。しかし、あのときもアゴラや夕刊フジが最初に追及した当初、大手メディアは産経新聞を除いて動こうとしなかった。今回は国籍問題と違って、過去に失職事例もある学歴の詐称疑惑。はたして大手メディアは今回ばかりは早期に動くのだろうか。
(追記:21:00)週刊ポストも昨年6月、小池氏の学歴疑惑を報じており、日本語を話せるカイロ大学の現職教授が確認した結果として、「1976年に間違いなく卒業」としている。ただし、成績は6段階で上から3番目で首席ではなかった可能性が高い。この報道は文春側も把握はしているだろうから、この情報との矛盾についても検証されるべきだろう。