一昨日の夜、研究室に残っている人たちとシカゴに在住しているOBをステーキハウスに招待をし、お別れの会をした。シカゴ大学で研修医をしている人、ノースウエスタン大学の助教授となったシンガポール人、来年医学部を卒業予定のケニア人、来年医学部入学を目指しているエチオピア人、シカゴ大学の他の部屋に移った中国人、後片付けを手伝いに日本から来てくれた二人を合わせて合計14人が集まった。男性4人、女性10人の女性優位の会だった。
6年間で39人の部下や学生が集って楽しく研究をした。彼らにとっては、辛いこともたくさんあっただろうが?国別の内訳は、日本が12名、中国8名、韓国4名、アメリカ合衆国2名、ギリシア2名で、あとは、エチオピア、トルコ、シンガポール、マレーシア、ドイツ、ケニア、シリア、ベトナム、インド、台湾、ナイジェリアが1名ずつだった。日本人は現在いる1名を除いて全員に日本に戻った。韓国人のうち2人は韓国には戻らず、オンコセラピーで勤務している。日本以外の27名の内、19名が女性だった。
お別れの会の冒頭に挨拶をしたが、やはり、別れは寂しく、こみ上げてくるものがあった。彼らを通して研究者を育てる難しさを改めて感じた6年間であった。日本以外の15カ国は、当然ながら、日本とは歴史的・文化的な背景が異なっており、多種多様な文化・考え方に接することが出来た。中国人の8名は、非常に日本人的な中国人と、とても私には理解できない中国人がいた。しかし、このような多様性を受け入れていることが米国の強さを作り出している根源だと思う。多様な国々の人たちとの人脈形成は個人レベルでも、国家レベルでも極めて大切だ。米国で学んだ人たちが、母国に戻って影響力の大きな人物になれば、いろいろな形で、外交的な力にもなってくれるだろう。
日本人の留学生が減少し、中国・韓国・インドからの留学生が急増している。日本は、近い将来に、これらの国と比して、外交的なパワーが弱体化していくだろう。外交と言っても、最も大事なのは、人と人のつながりだ。医療分野でもそうだが、10年、20年、50年先を見据えた国家戦略に欠けているのが、日本だ。その観点では、よくても悪くても、中国は長期的な国家戦略を持っているように見える。
いよいよ、米朝会談が始まる(最後まで、本当に始まるかどうかわからないが)。世界は一気に激変するかもしれない。医療分野も激変しているが、これでいいのか日本の医療は?
シカゴ便りも、いよいよ、シカゴ時間の12日朝に発信する便りが最後になる。日本に戻って、がん患者さんや家族のために立ち上げたいと考えていることを紹介したい。
編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。