違法民泊罰金100万円:なぜ民泊は規制されるの?

高幡 和也

Open Grid Scheduler /flickr:編集部

6月15日、民泊の運営ルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。

今後は自治体に届出をすれば民泊営業が可能になり、急増している外国人観光客の宿泊先としてその受け皿になることが期待されているのだが、その営業届出数がかなり低調の様だ。

その理由は営業届出の手続が煩雑であることに加え、営業可能日数の年間上限を180日としたことだろう。

この民泊新法について批判の声も多いが、旅館業法の規制に風穴をあけた「民泊営業を届出で可能にする」という意義は小さくない。

なぜ民泊に規制が必要なのか。民泊の普及が日本より早かった諸外国の問題例を見てみると、その多くには騒音問題、転貸(また貸し)トラブル、脱税などが挙げられる。

※参考 国土交通省 諸外国における規制等の事例について

しかし、各国の都市が規制してる項目で注目すべきは年間営業日数の制限である。

ロンドンでは90日、パリでは120日、アムステルダムでは60日がその上限で、ニューヨーク市に関しては3戸以上の共同住宅で居住者が不在の場合は30日未満の短期滞在を禁止している。

世界の各都市でこのような規制を設ける大きな理由のひとつは「定住者の住居確保」にある。

所有・賃貸に関わらず、自らの住まいを一般的な賃貸住宅として貸し出すよりも旅行者向けに短期で貸し出す民泊の方がその収支は遥かによくなる。月額ではなく日額で、さらには部屋単位ではなく宿泊人数単位でも料金の設定が出来るのだから収支が上がって当然だ。

そこで懸念されるのが、その収支増加を狙い、多くの定住者用の賃貸住宅が民泊に転用されるのではないかという点であり、先に述べたとおり世界の各都市で民泊を規制する法を定めたのもそれを防ぐのが大きな目的のひとつだ。

国内に話を戻そう。民泊新法施行前は約6万戸ほどあるとされたヤミ民泊だが、6月12日の石井国交大臣の会見によれば、民泊事業の届出は約3000件に留まっている。

いくら手続きが煩雑で営業日数に制限があるといっても、さすがにこの件数は少なすぎる。

要件が緩和された簡易宿泊所の登録が増えているという現状を踏まえたとしても、それ以外のヤミ民泊が今後も「ヤミ」のまま営業を続けるという推測は暴論ではないだろう。

今後、違法な民泊営業には上限で100万円の罰金が課せられる。当然取り締まりも強化されるはずだ。

人口減少が急激に進む日本で、民泊が定住者の住宅を駆逐することは考えにくい。しかし、未だ人口が増え続け不動産価格が高騰している東京などの大都市においては、民泊が規制されなければ定住者への良質で安価な住宅供給の妨げになることも十分想定される。

「規制が厳しい」と批判の声が上がる民泊新法だが、上述した「定住者の住宅確保」という観点から考えると、民泊営業を届出だけで可能にし、世界の大都市の規定に比べれば営業可能日数が多少長い日本の民泊新法は、民泊に「前のめり」な国の姿勢が鮮明になったものともいえるのだ。

インバウンドだけではなく空き家問題を視野に入れたこの施策が、住宅需要の高い大都市でどのように作用するのかしばらく注目すべきだろう。