アマゾン・ドット・コムは28日、処方薬のインターネット販売を手掛けるピルパックを買収すると発表した。これにより医薬品の販売に本格参入する。ピルパックは全米への医薬品配送を規制当局から許可されており、ネットで処方箋を受け付け、1回の服用分を小分けに包装して配送している。米小売り最大手のウォルマートもピルパック買収に関心を示していたが、アマゾンが競り勝ったようである。
28日の米国株式市場では、これを受けて26日にダウ平均の構成銘柄に採用されたばかりのドラッグストアー大手、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの株価が大きく下落し、この一銘柄だけで、ダウ平均を44ドルあまり押し下げた。買収によりアマゾンがハワイを除く49州で処方箋薬を販売できるようになることなどが警戒されたようである。
ちなみに28日の米国株式市場では、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが買われ、アマゾンなどハイテク株にも押し目買いが入ったことからダウ平均は98ドル高となっていた。
日銀の雨宮副総裁は朝日新聞の単独インタビューで、物価の伸び悩みは先進国に共通するとし、「アマゾン・エフェクト」と呼ばれるネット販売の物価引き下げ効果などを理由に挙げた。
また日銀はアマゾンなどのインターネット通販の拡大に伴って、消費者物価指数(除く生鮮食品、エネルギー)の伸び率が0.1~0.2%程度押し下げられるとする試算結果を公表している。ネット通販との競合度が高いとみられる日用品や衣類には、0.3%程度の押し下げ効果があるとの結果も出している。
そして日本でのドラッグストアーであるが、日経新聞の記事によると医薬品だけでなく食品でも安値をけん引していることで、消費者物価指数を0.1%ほど押し下げているとの試算が出ているそうである。
日本でアマゾンが米医薬品事業に本格参入することはいまのところは考えづらい。しかし、可能性がまったくないわけではない。
物価の押し下げ要因となっているドラッグストアーにとって、今度はアマゾンが脅威となり、アマゾン・エフェクトによって物価はさらに押し下げられるといった構図も生まれそうである。
米国のトランプ政権は先月に薬価引き下げ計画を公表したものの、これまでに発言に見合った成果をほとんど挙げていない。しかし、それをトランプ大統領の宿敵とされるベゾス氏率いるアマゾンが実施しそうという皮肉な結果となりつつある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。