朝日新聞はこの3連休も平常運転だった。7月の休刊日はすでに終わっており、もちろん新聞が配られるという意味での営業はやっていたが、自らに批判が跳ね返ってくる得意(?)の「ブーメラン」記事を相変わらず、連発したことで、W杯決勝で沸いた連休中のネット上ですっかりネタにされた。
1本目は、連休初日の14日(土)夕方にデジタル版で配信されたこちら。
タイトルでもわかるように、炎天下でスポーツの部活動をする危険性を訴えている。この記事自体は問題がないのだが、朝日新聞が日本高野連と毎年主催している夏の高校野球大会は、まさに炎天下でやっていて、その大会運営については散々批判をされている。こんな記事を出した時点で、どういう反響がかえってくるのか火を見るより明らかなわけだが、アンチ朝日のネトウヨと呼ばれる人たちだけでなく、とうとうリベラル界隈の大物インフルエンサー、津田大介氏にまで心配される始末だ。
記事を書いたのは、中小路徹・編集委員。朝日を代表するサッカー記者の一人だが、野球担当以外から出てきた「異論」に組織としてどう応えるのか、生温かく見守りたくなる、味わい深い展開だ。
そして、本流の政治報道も負けじと、連休最終日の16日朝には、これまた見事なブーメランが繰り出された。
SNS参考にする層ほど内閣支持率高め 朝日世論調査:朝日新聞デジタル
3連休の2日間を使った世論調査で「政治や社会の出来事を知る際、どんなメディアを一番参考にするか」を尋ねたという。ニュースとしては記事タイトルにある通りだが、この調査のキモは、記事の終盤にも出てくる麻生副総理兼財務相の発言だ。麻生さんは6月、新潟での講演で、若い世代の自民支持率が高い背景として、「一番新聞を読まない世代だ。新聞読まない人は、全部自民党なんだ」などと述べていた。
おそらく朝日がこのタイミングで調査をした理由としては、この発言が正しいのかどうかを検証する意味合いが大きかったのではないだろうか。もし仮に政治情報の参考媒体をネットにしている若い層の内閣支持率が、ほかと比べても有意差がなかったり、低かったりすれば反論するつもりだったのだろう。しかし、メディア別の内閣支持率結果は、SNSが最も支持率が高く48%(不支持率22%)。次にネットで42%(同38%)。ここまでは支持率が上回ったが、既存メディアになるとのこの傾向が逆転。テレビは38%(同41%)、新聞は32%(同54%)だったという。
つまり、“イメージレベル”としては、麻生さんの言う傾向は合っていたといえる。しかし、朝日としては「悔しかった」のか、政権支持率と政党別支持率を分類して検証。
18~29歳の自民支持は32%で、全体の自民支持の34%とほぼ同じ。
参考にするメディア別の自民支持を見ると、内閣支持率ほどの大きな違いはなかった。
などと強調することで、「新聞読まない人は、全部自民党(支持)」という麻生発言を打ち消しにかかりたいらしい。前田直人・世論調査部長はフェイクとばかりに「❌」判定。
たしかに厳密に言えば「全部自民党」は不正確かもしれない。しかし、近年の世論調査で若い世代の政権支持率が高い傾向は再三報道され、麻生さんもそうした経緯を念頭に、演説のテンションが高くなって勢い余って、「多数」というべきところを「全部」と言ってしまっただけのようにも思える。話し言葉のなかで政権支持率と自民党支持率を細かく腑分けさせるというのも不自然にも思えるし、アバウトな感覚レベルの発言とはいえ、麻生さんの指摘した「傾向」は概ね合っていたのではないか。
麻生発言を❌判定した前田氏でもさすがに「でも…」と、大筋の流れは渋々認めているようにも見える。記事を書いた世論調査部の三輪さち子記者の筆致に、なんだか悔しさをにじませる、モヤモヤしたものを感じたのは私だけかと思ったが、私のフォロワーの皆さんも次のようにツイートしていた。
自分の意に沿わない調査結果が出た時の朝日新聞らしい、無味乾燥かつそっけない文体が香ばしいですね。キーボードの向こうに歯ぎしり、舌打ち、しかめっ面が読み取れるような。
朝日は「無党派層が一番多いから麻生発言は間違いだ!!」と些末な事を言いたげですが大意として麻生発言は正しいと調査が雄弁に語っているという・・
ただ、揚げ足取りでの麻生批判にとどまり、「報道しない自由」を行使しなかった点だけは進歩を認めてもいいかもしれない。昨年夏に出した拙著「朝日新聞がなくなる日」では、蓮舫氏の国籍問題当時の「報道しない自由」の行使について述べたが、多少は変わりつつあるのだろうか。
3連休が明けて今週は、通常国会が終幕へ。熱中症が心配な高校野球の地方大会は、まもなく北海道で甲子園切符の第1号をつかむチームが決まる。豪雨被災地の復旧が少しでも進むことを念じながら、平常運転で参りたいと思います。